森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック組織委前会長(代表撮影)
森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック組織委前会長(代表撮影)

 森喜朗元首相が女性蔑視発言で東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長を辞任して1カ月余り。森氏の地盤である石川県を中心に発売されている「月刊北國アクタス 2021年4月号」(北國新聞社)のインタビュー記事で、騒動当時の舞台裏や、「ポスト菅」の行方について、7ページにわたって語っていた。

「女性が入っている理事会は時間がかかる」
「組織委員会にも7人の女性がいますが、みんなわきまえている」

 などの発言が大炎上し、辞任に追い込まれた森氏。インタビュー記事の中ではこうした女性蔑視発言の内容そのものついては、ほとんど口にしていない。一方で、なぜ辞任に至ったかについては、

「私に対する批判は意図的なものもあった。オリンピックを中止させようという意図を持った勢力があおったんだね」

 と、恨み節を漏らしている。森氏の発言に対しては大半のメディアが否定的だったはずなのだが……。

 数々の要職を歴任してきた森氏だが、首相時代には「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国」という“神の国発言”で批判を浴び、その翌月には選挙を念頭に「無党派層は寝ていてくれればいい」と発言して火に油を注いだ。女性蔑視発言はそうした「過去」も相まって強く批判された面もあるはず。森氏は、自身の発言に他の政治家がとった行動が納得できなかったようで、次のように不満を漏らす。

「なぜ国会議員から擁護の声が一切出なかったのか。森さんの世話になった人はたくさんいるし、細田派の人だっている。なのに、なぜみんな口をつぐんだのか。結局、国会議員のスケール(器)が小さくなった」

「あの元気な馳(浩衆院議員)君も、心配して電話を掛けてきてくれたけど、外では黙ってるもんな」

 自身がかつて会長を務めた細田派に所属する後輩議員などへの恨み節が続く。

 自身の後任が橋本聖子参院議員となったことについても舞台裏を明かした。橋本氏は国会議員に転身した当時から、森氏のバックアップで階段を上ってきた。森氏のことを「父です」というほどの関係だ。森氏は、橋本氏が会長になる経緯にも深く関与していたようだ。

「彼女は国会議員は辞めたくないと。だから、分かった。それは私が何とかすると約束した。それで、すぐにバッハ会長と連絡を取ったんです。バッハ会長は『いいでしょう』と」

 永田町では「気配りの森」として知られる森氏らしい配慮だが、後任会長人事をめぐっても森氏の影響力が大きかったことがうかがえる。

「娘をひのき舞台に送り出す父親のような気持ちだよ」

 森氏はしんみりと、そう語ったという。

 森氏の長文のインタビューを読んだ自民党幹部は、こう語った。

「さすが森先生、そこまで考えていたんだとね。気配りの人だとあらためて感心した。確かに女性蔑視発言の時は誰も擁護しなかった。しっかり後輩に文句をつけるのも森先生だ(笑)。早くも、河野氏や野田氏と次期候補を挙げているのが一番、気になるね。『菅首相は長くない』という、森さんらしいシグナルなのかな」

(今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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