吉原光夫 (撮影/写真部・小黒冴夏)
吉原光夫 (撮影/写真部・小黒冴夏)
身長186センチの迫力の見た目なのに、話すとどこか柔和で、そのギャップが魅力かも (撮影/写真部・小黒冴夏)
身長186センチの迫力の見た目なのに、話すとどこか柔和で、そのギャップが魅力かも (撮影/写真部・小黒冴夏)

 昨年の朝ドラ「エール」で強面の馬具職人を演じ、最終回エールコンサートでの「イヨマンテの夜」も圧巻だった吉原光夫さん。42歳の実力派は、今、俳優人生で何度目かの転機を迎えている。そんな吉原さんが朝ドラ決定時のことや自身のキャリアを振り返る。

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「朝ドラ、決まりました!」

 2年ほど前、マネジャーからそう告げられた。

「そのときは、『やった!』とか『嬉しい!』という喜びより先に、『俺で大丈夫かな? 朝からこんな画力が強い顔が出て』という不安を口にしていましたね」

 普段からあまりテレビを見ないこともあり、朝ドラといえば、若手女優の登竜門という認識。また、舞台を主戦場にしながら時々映像のオファーも受ける中で、仕事の内容で一喜一憂するのはやめようと思っていた。

「今まで、いろいろやってきてるんですよ。最初は劇団四季で、四季を辞めてからはバイトばっかりしていた時期もありますし、仲間と劇団を立ち上げてからもしばらくは全然食えなかった。32歳で『レ・ミゼラブル』のオーディションに合格してからは、ミュージカルの仕事が続きましたけど、ずっと、ストレートプレイに憧れはありました」

 長く社会人を続けてわかったことは、仕事に大きいも小さいもないということだった。

「マネジャーは、朝ドラ出演を伝えたら俺がもっと喜ぶと思っていたのに、あっさりしていたのが不満だったみたいです(笑)」

 NHK連続テレビ小説「エール」では、二階堂ふみさん演じる音(おと)の実家が営む馬具店の職人頭役。「エールコンサート」で歌った「イヨマンテの夜」に度肝を抜かれた人も多いだろう。

「映像のお仕事をいただくのに、その枠の特色を全然知らないのもどうかと思って、最近家に小さいテレビを買いました。朝ドラの出演を一番喜んでくれたのは、富山の親戚筋でしたね。『全国ネットすげぇ!』って思いました(笑)」

 身長186センチ。小さい頃は自分が将来バスケットボール選手になると信じて疑わなかった。でも、大学進学の際にスポーツ推薦がもらえず、「モテたい、ラクしたい」というミーハーな動機で、芝居の専門学校に進んだ。「授業で海外の舞台『ジーザス・クライスト=スーパースター』のレーザーディスクを見せられ、強烈に、『この舞台に出たい!』と思ったのが、劇団四季のオーディションを受けるきっかけです」

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