ワクチンだけではない。世界中がコロナで混乱するなかで、尖閣問題でも中国は強硬だ。

 中国は、東シナ海などで中国海警局に武器使用の権限を与える海警法を2月1日に施行した。その後、中国の公船が日本の領海に侵入する動きが活発化している。前出の興梠教授は言う。

「昨年11月に発表された海警法の草案では、海警局について『海上武装力量』と明記されていました。これは海警局が海軍であることを意味するものです。ところが、最終的にこの言葉は消えました」

 そこには、中国の戦略が見え隠れする。

「他の条文で中国海警局は中央軍事委員会の命令に従うとも書かれていて、実質的に海軍の一部です。砲撃できる装備も備わっていて、もし偶発的な衝突が起きて海上保安庁が対応できないとなれば、自衛隊が出動するしかありません。中国は、国際的なアピールのために『日本が先に軍隊を派遣した』という口実を得るため、自衛隊の出動を待っているのかもしれません」(興梠教授)

 官邸も危機感を強めている。2月7日には、ジャーナリストの田原総一朗氏と国際政治学者の細谷雄一・慶応大学教授が首相公邸を訪問。菅首相に2時間にわたって中国問題を中心にレクチャーした。田原氏は、その目的をこう話す。

「米国はこれまで中国を誤解していた。中国を支援して経済的に発展すれば、やがて民主的な国に変わると思っていた。しかし、その考えは間違いであることがわかった。トランプ前大統領もオバマ元大統領も対中政策で失敗し、中国は現実的な脅威となった。そこで、バイデン大統領は対中戦略を大きく変えようとしている。菅首相には、そういった時代での日本の新しい戦略について話しました」

 田原氏によると、菅首相は細谷氏や田原氏の話にうなずいていたという。ある政府関係者は「近いうちに中国問題を含めた日本の国際的な戦略を考える会議を立ち上げる準備をしている」と話す。

 では、日本が考えなければならない「新しい対中戦略」とは何か。

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