まず、中国は自国の防衛ラインとして、沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」を重視している。ここを突破すれば、有事の際に中国の軍艦が太平洋に自由に展開できるようになるからだ。田原氏は言う。

「昨年、中国は高度な自治が保障されていた香港を支配した。次に問題となるのは台湾です。台湾が中国の支配下に入ると、第1列島線が突破されてしまう。米国は台湾問題に強い関心を持っている」

 そのことを示すように、米国の対中国戦略も変化している。

 米国の盟友である英国は、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を核にする空母打撃群を、年内にアジア太平洋地域に派遣することを決定した。ドイツも、海軍に所属するフリゲート艦を日本に派遣する検討を始めた。

 米国は着々と「中国包囲網」を進めている。ところが、世界の国々が一律にそれを歓迎しているわけではない。

 米国は、米国、日本、オーストラリア、インドの4カ国で構成される枠組み「クアッド」で、安保協力体制を整えたいと考えている。菅首相もクアッド構築に積極的だ。しかし、中国との対立を避けたいインドはクアッドへの参加に消極的な姿勢を見せている。田原氏は言う。

「アジアの国々は、中国と米国という二つの大国の対立にどう対応すればいいか苦慮している。日本は、そういった国に配慮して『中国包囲網にしない』という姿勢を見せる必要もある。そのうえで、アジア太平洋地域を守る戦略を立てなければならない」

 前出の徐氏は、今後の日中関係の日本側のキーマンは二階俊博・自民党幹事長だと話す。

「二階幹事長は、習近平国家主席と直接に電話で話せるほどの関係です。今後は、二階氏を中心に新時代の日中関係を作り直す必要があるでしょう」

 中国共産党は、今年で結成100周年を迎える。今後、習氏率いる中国共産党はどうなるのか。徐氏は言う。

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