「中国には56の民族があり、都市部と農村部では経済的な格差も大きい。その国を統治するには、強い政治勢力が必要だと多くの中国人は考えています。香港やウイグル問題で国際的に批判されても、中国国内で批判が少ないのはそのためです。中国は完全な国ではないが、これからも中国共産党の一党体制は続く必要があるでしょう」

 中国のGDP(国内総生産)は2010年に日本を追い抜き、この10年で日本の約3倍になるまで差が広がった。主要国の自然科学系の論文本数でも、16~18年の平均で中国は米国を抜いて世界一になった。日本は、10年の前回調査に比べて順位を一つ落とし、4位になってしまった。力を付け続ける中国を前に、日本のアジア諸国への影響力は低下している。前出の興梠教授は言う。

「日本は教育に関する予算が少ないなど、人材の育成を軽視してきました。その結果、優秀な研究者が中国に流出する事態まで起きています。日本は価値観を共有する国との関係を深めると同時に、自らの国力を強める政策を実行しなければ、中国に対抗できません」

 自国でのワクチン開発すらままならなくなってしまった日本。中国共産党が次の100年に向け壮大な世界戦略を進めるなか、日本はどんな道筋を進むのか。(本誌・西岡千史)

週刊朝日  2021年3月12日号