同省の担当者は、「孤食状態の人は増加傾向にあります。やむを得ず孤食になるということはあると思いますが、地域で共食できる人の数を増やすことは重要な課題です。交付金などで、共食の機会の提供を支援、補助しています」と話す。

 孤食が続くとどんな影響があるのか。東京都健康長寿医療センター研究所で、在宅高齢者の低栄養予防を研究している成田美紀さんはこう話す。

「コロナ禍で外出しづらく、共食の機会を持つことが難しい状況が続いています。孤食の機会が多くなると食事バランスが偏って低栄養になったり、抑うつ傾向が強くなったりすることが指摘されています」

 同研究所が16年に、東京都大田区に住む65歳以上の男女約1万5千人を対象に実施したアンケートでは、男女それぞれのほぼ半数が週1日以上の孤食と回答。孤食の人は、非孤食の人と比べて、食品摂取の多様性が低いとの結果が出た。

 肉、魚、卵、牛乳、大豆、緑黄色野菜、果物、いも、海藻、油の10食品群について摂取頻度を尋ねた質問では、孤食習慣のある人は、孤食ではない人に比べて、男女とも野菜、果物、油、および男性で牛乳、海藻の摂取頻度が少ない傾向に。

「孤食に限らず高齢者全般の傾向として調理にひと手間かかる食材や油っぽくかみづらい肉などは、どうしても少なくなりがちで、食べやすい食材にシフトすることが多い。特にコロナ禍においては、配食の利用ができなかったり、誰かに調理を頼めなかったりと、独居、同居ともに食品摂取の状況が悪くなる可能性があります」(成田さん)

 食事が偏ってしまうことで気をつけたいのは口腔(こうくう)内の健康だ。

「かめない、のみ込みづらい、渇くといったオーラル(口の中の)フレイルと食品摂取の多様性の少なさは関連が強く、ひいては身体のフレイルにつながりかねません」(同)

 オーラルフレイルは健康寿命とも大きく関わると言われているだけに、対策は必要だ。

 代表的な一つが「パタカラ体操」だ。「パ」「タ」「カ」「ラ」を繰り返し発声して口を動かすことで、口や舌の動きを鍛えることができる。

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