所得が133万円(会社員は201万円)以下であれば、「配偶者特別控除」が受けられる。扶養に入ると税金だけでなく、社会保険料もお得だ。条件は税金上の扶養と異なり、健康保険組合などによっても違うが、扶養に入れば家族の社会保険にタダで加入できる。

 家族構成を見直す手法では、扶養とは逆に、同じ住所の家族を別々の世帯にして住民票を登録する“世帯分離”もある。

 一緒に暮らす親の収入が低くて、住民税非課税世帯にあたるようなケースでは、介護や医療などの負担を減らせる。前出の太田さんは「広く知られてはいませんが、とくに介護サービスを受けていれば効果は大きい。新型コロナなどにかかわらず、すぐにでも検討すべきです」と強調する。

 介護サービスの自己負担は1~3割で、1カ月当たりの負担の上限は決まっている。上限を超えた額が「高額介護サービス費」として戻るが、この上限は介護を受ける親の収入ではなく、一緒に暮らす子どもを含めて世帯全体の所得に応じる。そこで親子の世帯を分けて、収入の低い親世帯だけで所得を判定してもらえば、自己負担の額が減るかもしれない。

 例えば、単身世帯で収入が国民年金だけの人の場合、自己負担の1カ月当たりの上限は1万5千円。所得のある人が同じ世帯にいれば、同4万4400円だ。世帯分離によって月2万9400円、年35万2800円の違いが出てくる。太田さんによれば、介護施設のサービスを使うなど、居住費や食費も含めて考えると、月8万円、年100万円近くお得になるケースもあるという。

 医療費の自己負担額の上限が、世帯の収入に応じて設定される「高額療養費制度」なども、介護サービス同様に、世帯分離で有利になることも。ただし、会社員が親と世帯を分けると、会社員の健康保険組合に入っていた親が国民健康保険料を払うなど新たな出費もあり得るので注意したい。

 ところで、給料から税金が自動的に差し引かれる会社員の場合でも、自分で払った医療費や寄付金などで還付を受けるには申告が必要だ。税金の払いすぎを取り戻そう。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2020年12月25日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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