東京都在住の40代の男性はこう打ち明ける。70代の父親は「要介護1」の認定を受けていた。扶養によって、所得税の「扶養控除」に加えて「障害者控除」も受けられた。過去の分も含めて、払いすぎた税金を取り戻す「還付申告」の手続きをすると、合計50万円近くが戻ったという。

 所得にかかる税金や社会保険料を減らす方法の一つが“扶養する家族を増やすこと”だ。扶養家族がいると、税金上の扶養控除によって税金は軽減。扶養家族が多いほど税金が少なくなる仕組みで、「税務署職員の扶養家族は多い」とささやかれる理由でもある。

 扶養の対象は、同一生計で、16歳以上の子どもや離れて暮らす親たち。年間所得が48万円以下の場合(会社員は給与が年103万円以下)で、年金暮らしの高齢者は65歳未満だと108万円以下、65歳以上だと158万円以下なら対象だ。前出の男性の父親は、収入が国民年金のみで年約78万円だった。

 扶養家族が高齢者の場合、年齢や同居かどうかによって扶養控除の額は違うものの、扶養する人の所得から、最低38万円の控除が受けられる。

 扶養控除などの「所得控除」は、控除額の分だけ税額計算のもととなる課税所得が減るため、減った所得税の分が戻る。38万円の控除では、これに所得税率をかけた分となる。例えば、扶養をする人の課税所得が500万円なら、所得税率は20%なので、38万円×20%の7万円程度が戻る。実際はもっと複雑な計算だが、目安にしてほしい。

 では実際、だれを扶養家族にすればいいのか。

 前出の男性のように、離れて暮らす親は、意外と見落とされがちだ。

「同居していないと扶養できないと思っている人は多い。税金の還付申告をやったことがない人は、5年分までさかのぼって申告できます。還付申告は、自営業者らを対象とする確定申告とは違い、受付期間は限定されていないので、今からでも検討するといいでしょう」

 社会保障制度に詳しい東京都杉並区議会議員の太田哲二さんは話す。

 夫や妻の仕事がなくなったり、収入が大きく減ったりしたら、夫や妻の扶養に入る手もある。共働きの場合、年収が高いほうの扶養に入ると有利だ。所得税の税率は所得が多いほど上がる。同じ控除額でも、高い税率の人のほうが戻りの額は多い。

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