田原:政府の総合資源エネルギー調査会のメンバーを見ると、原発推進派ばかり。野党にはそうではないというビジョンを示してほしい。

枝野:総電力使用量を抑制させる必要があります。電力会社の売り上げが減っていく話なので経産省は言えないでしょうが、それが世界の先進国の本流です。われわれとしては、建物の断熱化が大きな柱になると考えています。中小建設業者の仕事を増やすなど、地域の小規模事業者の景気対策にもなりますし、地方創生の柱でもあります。

田原:経済対策はどうだろう。国民はアベノミクスが成功したとは思っていない。野党には対案を聞きたいけど、枝野さんたちは反対するだけ。

枝野:そんなことはないです。たとえば、われわれなら所得の再分配をする。賃金の安い看護師、介護職員、保育士など、エッセンシャルワーカーの待遇を見直す。これは国が直接できる経済対策です。消費拡大のためには、所得の低い人の所得を上げるしかない。賃金の格差が広がって低所得者が増えれば、買い物をする人も減り、消費は落ち込みます。既存のエコノミストとか、昭和期の高度経済成長で頭が止まっている人には、これが経済対策だと理解できない。だから野党には対策がないと言っているんです。格差の是正と社会保障の充実が消費を伸ばす、という時代の転換をわれわれは主張しています。

田原:憲法改正についても聞きたい。安倍政権時、本気で改憲をやる気があったとは思えない。

枝野:自民党は憲法を変えようと思っているのではなく、憲法を政局の道具に使おうとしているだけです。本気で取り組もうとされている人もいますが、そうした人たちは中心から外されています。これでは議論はできない。

田原:与野党にしても賛成、反対で続けるのではなく勉強会をやるべきだと思う。

枝野:まっとうな議論をするのであればいくらでもやります。けれども、たとえば憲法審査会で審議もせずに採決させろとかでは話にならない。われわれは解散権の制約とか、臨時国会の召集に期限を設けるべきだとか、提案しています。ただ騒ぎたいだけの人ではなく、憲法を真剣に考えている人を自民党の真ん中に持ってくるという姿勢がないと進まないと思います。

田原:与野党がけんかばかりではだめだね。期待しています。

(構成/本誌・秦正理、西岡千史)

週刊朝日  2020年12月18日号より抜粋

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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