今は、当時の彼らの曲をYouTubeなどで聴くこともできる時代。伝説のバンドと呼ばれるだけあって、そのサウンドがまったく古くならないことに驚かされる。

「ビートルズのルーツにまで遡って、50’sの曲やリズム&ブルースを浴びるように聴いていたからね。自分たちなりの“ロックはこうでなきゃ”みたいなこだわりが生まれたものの、最初は洋楽のまねですよ。でもボブ・ディランも言ってるじゃない? 『すべての創造はまず模倣から始まる』って。俺たちはその模倣も下手だったからさ、曲を作って、演奏して、歌っているとそこに“自分たち”が出ちゃうんだよ(笑)」

 30年以上前のロックが、今聴いても鮮烈で普遍的な何かを感じさせるのは、音楽へのこだわりとオリジナリティーが融合した結果、ということなのだろうが、ユカイさんは、そこにもう一つ「日本語」という要素を付け加えた。

「不思議なんだけど、どんなに洋楽っぽいサウンドを作っても、日本語で歌うと、日本のものになっちゃう。25年前、ディズニーさんからお話をいただいて、ランディ・ニューマンの『君はともだち』(映画『トイ・ストーリー』の主題歌)を日本語で歌っていくうちに、『これは、ランディの歌う曲とは別のものだな』って思うようになった。英語バージョンで歌うのもかっこいいんだけど、日本語バージョンだと、言葉がグッと胸に迫る。これはこれで日本語オリジナルなんじゃないって」

(菊地陽子 構成/長沢明)

ダイアモンド☆ユカイ/1962年生まれ。東京都出身。ロック・ボーカリスト。86年、RED WARRIORSのボーカリストとしてデビュー。89年にバンド解散。90年、「DIRTY HERO」でソロデビュー。96年には、「トイ・ストーリー」の日本語版主題歌「君はともだち」を歌い幅広い層から注目を集める。映画、舞台などで役者としても活躍。自著に自身の不妊治療についてユーモラスに綴ったエッセイ『タネナシ。』などがある。

>>【後編/性愛から慈愛へ コロナ離婚よぎったダイアモンド☆ユカイの変化】へ続く

週刊朝日  2020年12月4日号より抜粋