統合失調症は症状が安定しても疲労感や対人関係での不安・緊張、集中力や持続力の低下といった、社会生活を送る上で支障となる障害が残りやすい。社会から取り残された気持ちになり、喪失感や挫折感で人とうまくかかわることができなくなる人も多いという。

「精神科デイケア」は、こうした生活のしづらさを改善するために、グループでおこなうリハビリテーション法だ。看護師や精神保健福祉士、臨床心理士など多職種によるサポートのもと、さまざまなプログラムを通して、楽しみながら回復や社会参加をめざす。

 プログラムは、前述の「心理教育」に加え、「対人コミュニケーション能力を養うSST(社会生活技能訓練)」、パン作りや陶芸といった「創作活動」、「スポーツ」などを、一人ひとりの状態や希望に応じて組み合わせる。少し落ち着いてきたら、就職や一人暮らしといったおのおのの具体的な目標に向けたプログラムを加えるなど、段階を踏んでいく。

■回復に不可欠な人とのつながり

 デイケアには▽通所することで生活リズムを整える▽病気と上手に付き合えるようにする▽自信を取り戻す▽コミュニケーション能力を高めるなど、多くの役割があるが、「同病に悩む人とグループでおこなうことに大きな意味がある」と三家医師は言う。

「安心できる居場所と病気のつらさを共有できる仲間の存在は、回復の原動力になります。さらに仲間うちでも元気になって仕事を探しているなど『自分よりも少し先を行く先輩』の姿に励まされ、希望を見いだす人も少なくありません」

 通院先にデイケアがない場合でも、通院先を変えずに近隣のデイケアに通所することは可能だ。

 とはいえ病状によっては自宅にこもりがちになって、デイケアに通院するのは難しい場合もある。社会から孤立した生活は再発を招きやすいため、訪問診療や訪問看護を受け、人や社会とのつながりを維持しておくことが大切だという。

 また、地域には生活支援センターや障害福祉施設がたくさんあり、就労を目指す場合もいろいろな方法や支援がある。

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