帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
世界保健機関(WHO)本部=スイス・ジュネーブ (c)朝日新聞社
世界保健機関(WHO)本部=スイス・ジュネーブ (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「霊性について」。

*  *  *

【WHO】ポイント
(1)WHO憲章の健康の定義を改定する動きがあった
(2)改定案には霊的という言葉が加わった
(3)健康は身体性・精神性・霊性すべてにかかわる

 1948年のWHO(世界保健機関)設立のもととなるWHO憲章に健康の定義が定められています。それは以下のようなものです。

「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます」(日本WHO協会訳)

 98年にこの定義を改定しようという動きがありました。改定の準備段階での協議会に出席した山口昌哉さんの報告(「『霊性』ととりくみはじめたWHO」季刊仏教98年10月発行)によりますと、新しい定義として考えられたのは次のようなものでした。

「健康とは身体的精神的社会的かつ、霊的(スピリチュアル)に完全に一つの幸福のダイナミカルな状態を意味し、決して単なる病気や障害の不在を意味するものではない」

 つまり、これまでの定義にスピリチュアルとダイナミカルという言葉が加わったというのです。私はこの報告のコピーを見せられたとき、感動して身体が震えました。

 これまでも述べてきましたが、私が提唱するホリスティック医学では人間を「からだ」「こころ」「いのち」の側面からとらえます。

 英訳すると「BODY」「MIND」「SPIRIT」です。つまり「いのち」の本質とは霊性(スピリチュアリティー、spirituality)にあると言っていいのです。

 しかし、98年当時、日本の医学界で霊性とか霊的などと言おうものなら、爪弾(つまはじ)きにあうか、白眼視されました。ですから、WHOという国際機関で霊性について真正面から議論していると知って、心から感動したのです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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