この改定案は99年のWHO総会で審議されましたが採択にはいたりませんでした。しかし、20年の歳月が流れて、日本でも多くの医師が霊性を受け入れるようになってきています。まさに今昔の感です。

 ここで、霊性とはどういうものなのか、もう一度整理したいと思います。それには統合医学のオピニオンリーダーであるアンドルー・ワイル博士の説明を引用するのがいいでしょう。

 博士は「人間は身体性・精神性・霊性という三つの要素からなっている。したがって、健康は必然的にその三要素すべてにかかわるもの」と述べた上で次のように言っています。

「霊性というと、多くの人が宗教の世界の話だと考えてしまう。しかし、霊性と宗教にははっきりとした区別がある。エネルギー、本質といった、人間存在の非身体的・非物質的な側面にかかわるもの、われわれの一部分で、生まれる前から存在し、からだが崩壊したのちも存在するもの、それが霊性だ」(『心身自在』上野圭一訳、角川文庫)

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2020年11月13日号

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帯津良一

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帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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