ベージュの下着は、流行のファッションにも合わせやすい。今の流行スタイルは、Tシャツをさらりと着るナチュラル系。白いTシャツに響かないようにと、若者もベージュを抵抗なく身に着けるようになった。

 それでも、ベージュの下着といえば、男性受けの悪い下着の代表格ではなかったか。

「ここ10年ほどで、勝負下着という言葉をあまり聞かなくなりました。男性目線で人気がないからベージュを選ばないということは減っています。『社会の規範に自分を合わせない』という昨今の流れが最も表れるのが下着。この年代はこの色、という縛りが消え、ボーダーレスになってきた。周囲のイメージとは違うけれど本当はもっと大胆でありたいという女性も、下着なら大胆に変身できます」(山田さん)

 大阪府の須藤あや子さん(76)は、Ayako(@ayako.stagram)の名前でインスタグラムにおしゃれな写真を投稿する「インスタグランマ」。ふんわりと整えられたグレイヘアにブラックの装いで微笑む姿は、実にエレガントだ。ファッショニスタの須藤さんに下着観を聞いてみた。

「40、50年前くらいから、黒のランジェリーを身に着けています。当時はみんな肌色ばっかりでした。黒なんて、今は普通になったかもしれませんが、当時は水商売の女性が着けるイメージがありました。でも、黒の服が好きで、それには黒の下着のほうが合うと気づいたんです。それに、みんなと一緒っていうのが苦手で、黒に挑戦しました」

 須藤さんは必ずランジェリーを上下セットで着るという。

「誰に見られるというわけでなくても、セットで着ているだけで豊かな気持ちになります。破れたパンツもはきません。自分に合ったものを大切にしたい。それが私の生き方にもなっている」

 こだわりやときめきが詰まったランジェリー。あなたも自分のタンスを開いてみたら、今の気持ちが見えるかもしれない。(井上有紀子)

週刊朝日  2020年10月23日号