管理の負担を軽減するためには、空き家の期間を短くするに越したことはない。たとえば半年後に売却するなどと決めておく。それが無理ならばせめてゴールを決め、計画を立てた空き家対策をするのが理想だという。

「たとえば三回忌を家でしてあげたいと思うなら、それまでは親族などと協力しながら家を守るのもいいでしょう。なるべく一人で悩まずに、専門的な知識のある司法書士や業界団体、行政の窓口などに相談することをお勧めします」(「NPO法人空家・空地管理センター」代表理事の上田真一さん)

 空き家をテーマにしたセミナーや相談会もある。

 10月24日には東京都板橋区で「東京都空き家フォーラムin板橋」が開催される。主催は空き家所有者へのコンサルティングなどを行う「ネクスト・アイズ」(東京都港区)。代表取締役で空き家相談コンサルタントの小野信一さんは言う。

「空き家の利活用は基本的に『自己利用』『リフォームして賃貸に出す』『売却』の3パターンしかありません。投資効率で考えるとできれば2年で回収が望ましく、5年以内に回収できないリフォームは絶対にするべきではないと考えています。というのもリフォームは応急処置に過ぎず、5年後にはまた新たな費用がかかるからです」

 立地の市場調査結果などを見せて、最後は所有者に決断をしてもらっているが、「売却」という結論に至る人が圧倒的に多いという。

 行政も空き家の売却を後押ししている。国土交通省の「空き家の発生を抑制するための特例措置」では、相続の年から3年以内に空き家を売却した場合に譲渡所得の3千万円までが課税対象から控除される措置の適用が当初より4年延長され、2023年12月31日までになった。

 最後は売却という「究極の決断」をせざるを得ないのか。『60分でつかめる ネットではわからない空き家問題の片づけ方』の著者で住生活コンサルタントの大久保恭子さんはこう話す。

「家は貴重な社会的な資源です。住み手がいてそこで生活を営み利活用されて初めて意義があるもの。住む人がいないなら売却すべきです。中には家を手放すのが忍びない、という人もいると思いますが、そのような場合は庭の植木や灯籠、大黒柱などその家を象徴するようなものを一つ残して自宅に取り入れて、家を引き継いでいくと考えるのも良いと思います」

(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2020年10月23日号より抜粋