「全品298円(税抜き)」と書かれている鳥貴族メニュー(C)朝日新聞社
「全品298円(税抜き)」と書かれている鳥貴族メニュー(C)朝日新聞社

 政府の飲食店支援策「Go To イート」のポイント事業で、「鳥貴族錬金術」などがSNSで拡散しているとの指摘で、加藤勝信官房長官はポイント相当額(昼食で500円分、夕食で1000円分)を下回る飲食を事業対象から外すなどの対応策を発表した。

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 だが、錬金術の闇は鳥貴族だけではない。問題となったのは、Go To イートのシステムだ。食べログやぐるなびなど、予約サイトで飲食店を予約。そこで飲食をすれば、1人につき、夕食は1000ポイント、昼食は500ポイントが与えられる。

 焼き鳥チェーンを展開する鳥貴族は、全品が327円均一(税込)。1人で予約し、1品のみを注文して飲食すれば、ポイント還元分を相殺すれば、673円あまり得するというもの。
それが「トリキマラソン」と揶揄され、鳥貴族の店舗では、1人で予約、1品注文する客が続出したという。鳥貴族のチェーン店で働くスタッフがこう話す。

「SNSでトリキ錬金術が拡散して、そういうことができるんだと思っていたら、初日から1人で予約して、来店し、焼き鳥1品しか注文せずに帰っていく人がいたので、驚いた。自分が接客した中にも3人以上、いました。1人の予約でも席を1時間は確保せねばならず、予約サイトにも1人につき200円の送客手数料が必要になる。『1品だけだと全然、もうからん。だがGo To イートのシステムからは問題なく文句の言いようがない』と店長も苦笑していた。政府の見直しで助かった」

 政府の対応策と鳥貴族もポイント還元の対象をコースメニューに限定する変更を行ったことで、騒動は収まったかに見えた。だが、大阪市内で中華料理店を経営するAさんはこう疑問を呈する。

「Go To イートが本当に飲食店のためになっているのか、疑問ですね」

 Go To イートに参加するには、予約サイトに登録することが前提となる。予約サイトに登録するには「登録料」などの費用が必要だが、Go To イートのスタートで無料のプランもできたという。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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食事券を換金し、儲けるチェーン店も