話はややずれるが、JR東海が、東京と名古屋、大阪を結ぶ「リニア中央新幹線」計画を進めている。だが、南アルプスの地下を通す工事で静岡県側が首をたてにふらず、工事は足踏み状態だ。JRと自治体の関係とは違うものの、外資によって買い占められた山林が将来、公共工事などの対象となった場合、その開発が進めにくくなる可能性は大いにある。

 さらには不穏な海外情勢が、日本の山林を買い漁る動きを加速しかねない。前出の高橋さんは「(海外に移住した中国人や子孫ら)華僑にとって、日本は『安全資産』という認識がある」と強調する。とくに香港は、民主化問題で中国政府が統制を強めつつある。「香港の不動産投資をしていた人が、いまの香港で投資するのはリスクがあります。円資産、日本の不動産を持っておきたいと考えているのではないでしょうか」

 日本の山林はどうなっていくのか。

 経済成長期の伐採後に植えられた木が大きく成長し、伐採期を迎えつつある。「山林は資源。林業はいま、先進国の産業です。次は“日本”と言われています」と全国森林組合連合会の関係者。木材の加工技術が進み、大規模な公共建造物や商業施設にも木材が使用されるようになった。低迷する木材価格がやがて上向き、山林の価値が見直される期待感が出てきた。

 地球環境の観点からも、役割が変わろうとしている。国土交通省は「国土利用の現状」のなかで、近年の国民の森林・林業への期待は、木材生産機能から災害の防止や水資源の涵養(かんよう)、温暖化防止などの公益的機能の発揮へと変化していると指摘する。熱帯林の伐採に対して欧米から強い懸念の声も上がるなど、かつての山林のあり方が問われ始めている。

 日本の山林の価値がまさに見直されようとするなか、長期的な視点で買い占めに走る外国人がいるとしたら、なんとも不気味だ。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2020年8月7日号