刑法犯認知件数は、各都道府県警が発表している資料から。人口は総務省「2019年1月1日住民基本台帳人口」を利用。犯罪率は人口1千人あたりに1年間に起こった刑法犯の認知件数。首都圏は東京、神奈川、千葉、埼玉、関西圏は大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山 (週刊朝日2020年8月7日号より)
刑法犯認知件数は、各都道府県警が発表している資料から。人口は総務省「2019年1月1日住民基本台帳人口」を利用。犯罪率は人口1千人あたりに1年間に起こった刑法犯の認知件数。首都圏は東京、神奈川、千葉、埼玉、関西圏は大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山 (週刊朝日2020年8月7日号より)
移住を考える人が、新型コロナウイルスの感染拡大による生活設計の変更で増えている。自分が移り住む地域は安全か。国の公表資料を基にしながら独自にランキングをまとめた結果を踏まえ、考えてみよう。
編集部では2大都市圏(首都圏と関西圏)の犯罪率を調べた。警察庁OBで危機管理を専門とするY,s LABの屋久哲夫社長は「犯罪は地域の取り組みで刻々と変化する。どんな犯罪が何時頃どこで起きているか関心を持ち、自衛につなげるべきです」と言う。
ランキングを見ながら各地域について説明しよう。
全体的に中心部での犯罪率が高い。首都圏1位は千代田区(東京都)。通勤などで多くの人が入ってくる結果、犯罪の数も多くなっていると見られる。警視庁が公開している犯罪の種類別件数を見ると、万引きや自転車盗が多い。商業施設や駅周辺などで事件が起きていることがうかがえる。
犯罪認知件数が一番多かったのは新宿区(東京都)だ。強盗などの凶悪犯、暴行や傷害などの粗暴犯が多い。発生場所を見ると、買い物客ら大勢の人でにぎわう新宿駅東口一帯の「新宿3丁目」や、日本一の歓楽街と呼ばれる「歌舞伎町」で件数が多い。
関西圏で犯罪率が高かったのは大阪市中央区だ。道頓堀や心斎橋など大阪を代表する繁華街がある。犯罪の種類で見ると、自転車盗や万引き、置き引きなどの窃盗犯、傷害などの粗暴犯、強盗などの凶悪犯が他の地域と比べて多い。
屋久氏は、こう話す。
「希望の街が絞れたら警察署のホームページなどで犯罪の状況を調べるといい。女性一人か、小さな子どもがいるかなど自分の生活状況に照らして確認するといいです。その上で実際に街を歩き、防犯カメラの有無や街灯が多いかなどを確認する。そう意識するだけで、犯罪に遭うリスクを下げることができると思います」
犯罪率の低い街を見ていこう。首都圏では川崎市(神奈川県)の宮前区と麻生区が1、2位に入った。川崎市といえば、治安の悪いイメージを持つ人も多いが、実態は異なる。タワーマンションなどが建ち、人口が増加。住みやすい街として人気を集めている。
関西圏では、有田市(和歌山県)や養父市(兵庫県)など中心部から離れた静かな街が目立つ一方で、4位の京丹後市(京都府)では40基以上の防犯カメラを設置するなど犯罪のない街づくりに取り組んでいる。
警備大手ALSOK(東京都)でコミュニティー向けの防犯講座などを担当する瀬戸拓郎さんは指摘する。
「田舎であれば犯罪も少ないが、逆に空き巣などに狙われたりするので注意が必要です。また、不法投棄や落書きなどがあると犯罪につながると言われています。地域一体となって、そういう犯罪の芽を潰そうとしているか見ることが大切です」
どの街でも犯罪は起きる。まずは自分の住みたい街のリスクを見極めよう。(本誌・吉崎洋夫、松岡瑛理)
※週刊朝日 2020年8月7日号