東京都新宿区にある東京女子医科大学病院 (c)朝日新聞社
東京都新宿区にある東京女子医科大学病院 (c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスの第2波到来が懸念される中、話題となっている新宿・歌舞伎町の目と鼻の先にある東京女子医科大病院で、経営者側と職員らがもめている。中堅看護師に話を聞くと「馬鹿にするにも程がありますし、火に油を注がれた気分です!」と烈火のごとく怒りだした。何が起きているのか。

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 発端は、夏季ボーナスの不支給問題だ。病院側は6月12日、コロナによる患者数減などで大幅に収支が悪化したとして、ボーナスの不支給を決めたと教職員に通知した。労働組合の資料などによると、病院側の対応に不満を持った看護師の退職希望者の予想数が400人超と言われている。

 東京女子医大といえば、かつては名門で知られたが、医療事故などにより2002、15年と、2度の特定機能病院の承認取り消しという問題を起こし、患者数減などによる赤字経営に転落した。

「職員の給与は削減されてきた一方で、大学側は無駄ともとれる出費を繰り返している」と先の看護師。最近では、理事長室の移転などの設備投資に6億円をかけるという。

「病院側は『理事長室だけで6億円ではない』などと言いますが、人件費とてんびんにかけて設備投資を選んだことに変わりはない。私の6月の給料は初任給よりも低かったんです。減給とボーナスカットで悩む従業員を横目に、今日明日に倒壊するわけでもない理事長室にお金をかける必要があるのでしょうか」

 別の看護師も「病院や理事会の対応に憤りを感じている」と漏らす。組合の資料によると、看護師の退職希望者の件について病院側は「足りなければ補充するしかない。現在はベッド稼働率が落ちているので、仮に400人が辞めても何とか回るのでは」と強気の対応だったという。

 こうした経営方針の背景には何があるのだろうか。看護師らが口をそろえて言うのは、創立者の一族で、昨年理事長に就任した“女帝”の存在がある。

「気にくわないことがあると資料を職員に投げつけるなど、パワハラ的なところがあると聞いています。周りも意見が言えなくなっているようで、独裁的に振る舞っているともよく聞きます」(30代看護師)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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