おそらくいまも同じ答えが返ってくるのではないか。演じた御曹司のように傲慢ではないと言いながら共通点もあるという。

「冷静なところは似ていると思います。僕もあれだったらあれ、これだったらこれとはっきり決めるほうで、あいまいなところがない」

 物静かな空気をつねに身にまとう。ふだんの口数も多くはないそうだ。

「ふだん人と話すときは、私は割と聞き手に回るタイプですね。友達同士だといつも聞き手に回る感じです」

「私の名前はキム・サムスン」のヒロインは30歳、金も学歴もなく太めのパティシエ。15年前の韓国ドラマにはいなかった型破りのヒロインだった。御曹司がそんな彼女に引かれていくところがドラマの見どころのひとつだったが、ヒョンビン自身もサムスンが好きだと語っていた。

「仕事に対して情熱をもっているところ。恋にも仕事にも一生懸命なところ」

 ただ、御曹司がサムスンと元恋人との間で気持ちが揺れるという設定には倫理的に違和感があったようだ。

「僕なら自分の好きな人だけを選択すると思う」

 俳優への道に目覚めたのは高校時代。芸能界に入ることに両親は反対。名門の中央大学演劇学部への進学が条件だったが、見事に合格。自分の思いを貫いたという。03年、ドラマ「ボディガード」でデビュー。翌年のドラマ「アイルランド」では繊細で純粋なボディーガードを好演、「キム・サムスン」の起用につながった。すでに役者は「天職」と語っている。

「昔はそう思わなかったんですが、今はそうだと思えるようになってきました。自分にできることもこれしかありませんし」

 それから6年。主演ドラマ「シークレット・ガーデン」が大ヒット、再び“ヒョンビン・シンドローム”が韓国を席巻した。11年3月、入隊5日前に、インタビューはソウルで行われた。週刊朝日の取材が単独メディアでは入隊前最後だったためか、ヒョンビンはうちとけた様子で、多くを語った。聡明で、頭の回転が速く、こちらの質問に即座に答えを返してきた。

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