当時、韓国で大いに盛り上がっていた「シークレット・ガーデン」で演じたのは超わがままな御曹司。当初、「サムスン」のときとキャラがかぶるのではと思われたが、まったく別の人物をつくりだし、ヒョンビンの演技力はまた高く評価された。演技のうまさに加え、役作りの入念さと努力には監督も舌を巻いたという。本人とは似てもいないキャラクターと思われたが、共通点があると語った。

「僕も自分をわがままだと思っていますよ。たとえば僕は自分のやりたいことがあれば、必ず実行するんです。作品選びも自分の気持ちを最優先して、周りから『これがいいのでは』といくら薦められても聞きません。そういう点では、僕は個人主義、わがままです。あと、自分のほしいものがあったら必ず手に入れようとするところも似ているのではないでしょうか」

 ハ・ジウォン演じるヒロインと魂が入れ替わるという場面では、男性の姿のまま女性になるという難しい設定を繊細な演技でこなした。

「女性になるのはなかなか大変でした。ただ、男性としての姿も女性としての姿も、自分の内から出てくるものでした。もちろん、役で作った部分もありますが、女らしさも自分のなかから自然に出たものです。ひとつ言えるのは、笑わせるために、わざとおかしく演じようと思ったことは一度もないということです」

 女性的な面が自分のなかにあるという。

「たとえば、女性らしさと言えるかどうかわかりませんが、ちょっと細かく、几帳面なところはありますね」

 ハ・ジウォンを観察して女性のしぐさも研究、習得した。

「体の動きも彼女の身ぶりからヒントを得ました。男性と女性とは体の構造が違うものなのですね。あとで筋肉痛に悩まされました」

「私の名前はキム・サムスン」もそうだったが、ヒョンビンが選ぶ作品のヒロインは、男性と互角に働き、力強く個性的な女性が多い。

「仕事にも恋にも情熱的に生きていく魅力的な人たちですが、僕自身、明るく逆境を乗り越えていく姿に惹かれます。仕事も恋も楽しく頑張る女性が好きです」

>>【後編/意外? 「愛の不時着」ヒョンビンは「あがり症。一番苦手なのはオーディション」】へ続く

(朝日新聞文化くらし報道部・林るみ)

週刊朝日  2020年7月10日号より抜粋