林:ロシアにも行って歌われたんですって?

渡辺:はい。プログレッシブロックのエマーソン・レイク・アンド・パーマーが、ムソルグスキーの「展覧会の絵」をカバーしてるのを高校生のときに聴いてぞっこんになって、ピアノで弾いてみようかなと思ったんだけど、楽譜を見たら上級よりもっと難しい曲なので、ピアノはあきらめて、歌で参加する手もあるなと思って、それがずっと頭の中にあったんです。

林:ええ。

渡辺:そして30代半ば過ぎぐらいに、「展覧会の絵」から5場面を抜粋して、それを女性のピアノトリオと私とで8分ぐらいにまとめたんです。40代は「題名のない音楽会」で東フィルと共演して、50代に日ロ友好で、ムソルグスキーゆかりの地であるサンクトペテルブルクで、あちらのオーケストラと一緒にできたんです。まさかこんなところまで来るとは思わなかったので、夢のようでした。

林:素晴らしいです。

■ 「迷い道」がノーベル賞発明のヒントに?!

渡辺:音を楽しむエキスパートになりたいというのが目標なので、それに向かって着々と。

林:今度のアルバムのためのコンサートもなさるんでしょう?

渡辺:これからですね。ライブは九州のほうからウォーミングアップを始めます。

林:いよいよ活動再開なんですね。

渡辺:今年3月、日本テレビの「成功の遺伝史」で、ノーベル賞受賞者の吉野彰さんが、あの発明(リチウムイオン電池)は私の「迷い道」の最初「現在・過去・未来」の詞がヒントになったとおっしゃったんです。未来の目新しい研究内容を仲間に否定されて悩んでいたとき、「迷い道」が流れた。なんで“過去・現在・未来”じゃなくて、“現在・過去・未来”なんだろうと。そのときひらめいたそうです。今まであった電池が、もっと優れものになったらと。

林:はい、私も何かで聞きました。

渡辺:そういうこともあって盛り上がるだけ盛り上がってたのに、コロナがあってストンとなってしまって、私もどうすればいいんだという気持ちになりましたけど、結局、最初に戻るのがいちばんいいんだと思って、また石塚まみさんと二人で始めます。

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