林:渡辺さん、一度も結婚してらっしゃらないんですよね。

渡辺:新人賞からスタートして、回転が速すぎたというか、ゴーッと音がするような状態で25歳ぐらいまできてしまって、結婚ということを考えたりしたときもあったんですが、そのとき私はもう自分でマンションを買って持っていたし、男性とは話題も価値観も違っちゃって、結婚もかなわず、そのうちにバンドブームになっちゃったんですよね。

林:いろんなことがあったけど、公私ともに一人でやっていこうと思われたわけですね。

渡辺:私はどっちかに徹しないとダメなんだろうなと思う。中途半端にはできない。無理ですね。

林:ファンの中にお金持ちのお医者さんとか実業家の人がいて、「二人で海外に行って楽しく過ごして、君はのびのび歌をつくっていいよ」とか言う人、あらわれなかったですか。

渡辺:恋愛感情じゃないけれども、私の歌が好きで協力してくれようとする人はいましたね。某有名レストランのシェフが私のマネジャーと一緒に育った方で、近いポジションにいたときがあって、「僕の事務所に来ないか」なんて。

林:そんなこともあったんですか。

渡辺:私はシンガー・ソングライターなんですけど、歌い手というイメージがものすごく強くて、オリジナルのほかに高橋達也さんの勧めで、トリオとかビッグバンドでジャズを歌ったり、ラテンの世界からも、「この声と性格だったらラテンやったらいい」なんて言われて深みにはまり、ほかにも映画音楽とか、「THE夜もヒッパレ」なんていう番組もありましたでしょ。

林:はい、ありました。

渡辺:いつも譜面をたくさん持ってあっちこっちという感じで、結婚を考えるヒマもなかったです。いつも曲を覚えてるか、つくってるか、歌ってるかでしたね。

林:私、「ブルー」も大好き。「♪あなたは優しい目 だけどとてもブルー……」。すいません、ご本人の前で歌うなんて大胆なことを(笑)。

渡辺:アハハハ。

美空ひばりにつづく人をつくりたいと言われ…

林:そうそう、急に思い出しましたけど、「ブルー」が出たころに、私と仲良しの某大物プロデューサーに「渡辺真知子さんっていいよね」と言ったら、彼が「僕もファンだから、何かやりたいと思って彼女に申し出たんだけど、『あんなアイドルグループのプロデューサーなんか、フン!』って断られた」と言ってましたよ。

渡辺:違う、違う! 言ってな~い! そんなこと(笑)。確か私が30歳過ぎぐらいのとき、美空ひばりさんが亡くなったあとで、ひばりさんに続く人をつくりたいというお話を、その方からいただいたんだと思います。

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