柴門:男向けの雑誌に描いてても、男の漫画家たちの仲間に入ってるわけでもないし、漫画家との付き合いはほとんどないですね。

林:いかにもお茶の水女子大出のインテリの女の子がデビューしたという感じで、ストーリー運びが知的だし、心理描写も新しいと思った。男の子のフワッとした感じなんかも、今の青春小説に通じるみたいな、まだ自分が何者でもない浮遊感みたいなものが当時から出ていて、すごく新しかったような気がする。

柴門:私は青春小説とか児童文学がすごく好きで、そこに描かれている登場人物の男の子に憧れてたから、それを自分の漫画のキャラクターで動かしてたような気がする。

林:柴門さんの好きな男の子って中性的な感じで、筒井道隆が好きだったんですよね。

柴門:ドラマの「あすなろ白書」のころのね。今でも究極の好みです。

林:あと、藤井フミヤも好きだったのよね。

柴門:秋元(康)さんと対談したときに「藤井フミヤに絶対会ったほうがいいよ。女を引きつけるフェロモンを出してるから」って言われて、そのとき初めて「フェロモン」という言葉を秋元さんと私との対談で世の中に出したんです。

林:へぇ~、そうなんだ。

柴門:それまではゴキブリのオスがメスをおびき寄せる匂いとしてしか使われてなかった。

林:私、覚えてるけど、フミヤが「車でデート行こう」って言ったら、柴門さんがつっかけみたいな靴をはいてたから……。

柴門:「せっかくのデートなんだから、はきかえておいでよ」って言ったの。バブリーなエピソードですよね(笑)。

林:いいなあと思った。フミヤとデートしてるのかと思って。

柴門:いやいや、「あすなろ白書」の主題歌を歌っていただいたので、仕事上のお付き合いです。

林:柴門さんはあのとき時代の先端のいちばんいいところにいたのに、それに浮かれることなく。

柴門:大変だったんです。子ども2人育ててたから。

林:あれが若いときだったら、フミヤと浮名を流しつつ、筒井道隆のマンションから出てきたり、楽しいこといっぱいあっただろうに(笑)。

柴門:アハハハ。

林:あのとき独身の売れっ子漫画家でイケイケだったら、こんなに長く女性の支持を得られなかったかもしれない。早く結婚しててよかったよね(笑)。

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