柴門:よかった。40代のころは子育てで時間とエネルギーを取られちゃって、ほかのことほとんどできなくて、息子は喘息持ちで体が弱くて、交通事故にあったりして、けっこう手がかかって、高校卒業するまでいろいろ大変だった。でも、とりあえず結婚したし、よかったなと思って。娘も結婚して。

林:お孫さんもできて、ついにおばあちゃんになっちゃって、仕事ではまた何度目かのブームが来て、素晴らしいです。

柴門:60歳過ぎたら好きなことだけしようと思ってたんです。でも、漫画描くこと以外にやりたいことがなくて。だからいま幸せですね。やりたいことやってるから楽しいです。

林:『恋する母たち』の連載が終わったら、来年からまた何かやろうと思ってる?

柴門:まだ何も。この連載を始めたとき、たぶんこれが最後の連載だろうなと思ったの。年齢的にも体力的にも気力的にも。

林:私も毎回そう思いながらもやっちゃいますよ。「週刊誌の連載キツい。これが最後だ」と思いながら。

柴門:60過ぎて女性で週刊誌連載やってるの、高橋留美子さんと私ぐらいじゃないかな。でも、私より上はバリバリ世代がけっこういて、庄司陽子先生もレディースで連載してるし、里中先生も現役だし。なんと、わたなべまさこ先生が90歳で新連載始められたって。

林:それはすごいな。

柴門:私たちより年上で活躍されてる方って憧れます。萩尾望都先生もまだバリバリ現役だし。

林:萩尾望都先生は去年ここに出てくださいました。ロンドンで展覧会をしたっておっしゃってましたよ。すごいです。

柴門:私も「できるだけ長く漫画が描ける人生をください」と神さまにお願いしてます。だって、ほかにないんですもん、やりたいことが。来年ほんとは海外に行くつもりだったんだけど、コロナの影響で行けるかどうか。

林:どこに行くつもりだったの?

柴門:ヨーロッパに行って美術館めぐりしたいの。誰か募って。林さん行きましょうよ。

林:行こう行こう。気の合う人を誘って行こう。

柴門:『恋する母たち』の連載がほんと大変で、これが終わらないと何もできない。あと、コロナワクチン開発かな。

林:そうですね。早く旅行に行ける日が来ますように。

(構成/本誌・松岡かすみ、編集協力/一木俊雄)

週刊朝日  2020年6月26日号より抜粋