佐伯チズ(さえき・ちず)/1943年生まれ。定年退職後にサロンドール マ・ボーテ、チャモロジースクールを開業。「佐伯式」の美肌術が大評判となった(撮影/大野洋介・写真部)
佐伯チズ(さえき・ちず)/1943年生まれ。定年退職後にサロンドール マ・ボーテ、チャモロジースクールを開業。「佐伯式」の美肌術が大評判となった(撮影/大野洋介・写真部)

 美容家の佐伯チズさんが5日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のため亡くなった。76歳だった。9日に事務所が発表した。

【写真】「主人の遺骨を食べて…」人生のどん底を語っていた佐伯チズさん

 2003年に化粧品会社を定年退職した佐伯さんは、同年の著書「佐伯チズの頼るな化粧品! 顔を洗うのをおやめなさい!」(講談社)がベストセラーになるなど、「佐伯式」の美肌術を広めて一躍話題となった。08年にはエステサロン「サロンドール マ・ボーテ、チャモロジースクール」を開業し、12年には大学の客員教授を務めるなど、活躍の場を広げてきた。だが、今年の3月にALSと診断されたことを公表。以降は車イスでの生活を余儀なくされるなど、メディアで闘病生活が報じられてきた。

 活躍の裏には苦難が絶えなかった。生前に自身の半生を振り替えったインタビューでは、42歳のときには最愛の夫をがんで亡くし、「信頼していた女性の裏切りに遭いました」とも告白していた。週刊朝日2018年8月17-24日合併号での佐伯さんのインタビューを再掲する。

*  *  *

 3年前、信頼していた女性の裏切りに遭いました。彼女には、10年ほど私のマネジメントや会社の経営を任せていました。

 彼女と、彼女が連れてきた男性に会社を乗っ取られたんです。言われるがままに出資した個人の2億円も、使途不明金のまま消えてしまいました。物販会社は私の手を離れ、「佐伯チズ」の商標の大半や、顧客名簿も持っていかれました。

 手元に顧客名簿がないから、私を信じてくれていたお客さまに、事情を知らせることができないのがつらかった。済んだことをあれこれ言うのは好きではありませんが、私がこうして表に出て話すことで、わかってもらうしかないんです。

 それまで第二の人生は順調だと思い込んでいました。ところが、人生ってそう甘くはないものですね。

――オードリー・へプバーンに憧れて美容家を志した。一つの転機は、42歳のとき。最愛の夫をがんで亡くし、お肌もボロボロになってしまった。

 私は父母の愛情を受けずに育ったから、結婚したときは本当にうれしかった。チャーミーグリーンのコマーシャルがあったでしょ。おじいさんとおばあさんが手をつないで歩くシーン。ふたりでよく「ああいう夫婦になろうね」って言ってたの。

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