大島:僕自身はテレビに出るのは好きなので、できるだけテレビの仕事をしようと思っています。

林:文化人がテレビに出ると堕落だとか、おっしゃる方がいますけど。

大島:もちろん、映画とテレビは違いますし、この違いは大事なんだけど、どっちの仕事が重要だという考え方は、僕は絶対に拒否します。たとえば、映画のほうが上でテレビは下だと僕の目の前で言う人がいたら、僕は殴ります。職業で人を区別するというのはいけないことだと思っています。

林:非常に腹の立つことが多い、と「私が怒るわけ」(東京新聞)に書かれていましたが、病気をされてからはいかがですか。

大島:病気によって人格が変わってしまうんじゃないかとか、変わったらどうしようと思ったことがあるんですよ。ところが、結果的には変わってないですね。腹が立つことはいまだにありますし(笑)。

林:今、腹の立つことってなんですか。大蔵省の問題とか、いろいろありますけど。
大島 一般的なことで腹が立ったりすることはないんですよ。目の前に不愉快な人間がいると、「俺は腹が立ってるんだ」と言うだけのことであって(笑)。マナーの悪い人とか。

林:でも、監督の前で無礼な人とかマナーの悪い人というのは、少なくとも、大島組にはいませんよね。

大島:普通はそういう人は入ってこないんですけど、たまにまぎれこんできてしまうんですね。でも、撮影に入って二、三日で排除してしまいますね。

(中略)

林:大島監督って怖いんでしょうね。

大島:僕は親切丁寧のかたまりだって思ってるんですけどね(笑)。

林:大島監督は教師型の監督じゃないって聞いたことがありますけど。

大島:教祖型ですね。つまり、俺に何にも聞くな、俺のことをわからないヤツはダメという考えなんです。僕に聞いてわかるんじゃ困るんです。何も聞かなくても僕が思っていることをわかる人間じゃなきゃ、一緒に仕事はしない。だから、僕からは一言も言いません。俳優さんにも。

林:それがいちばん怖い(笑)。

大島:怖いと思えば怖いでしょう。でも、何やったっていいんだって思えばいいんですよ。

週刊朝日  2020年5月22日号