試しに乗り合わせたタクシーの運転手さんにきいてみた。なぜ人と接してはいけないのか、話すうちに、いかに恐ろしいことなのかをわかってくれた。

「ウイルスの餌食にならないためなんですね」。車の降り際にそう言われた。

 ソーシャルディスタンスとは一人一人が一定の距離を保つこと。二メートル以上離れて話す、座る、歩く。それは何もウイルスを防ぐためだけではない。個を保つためにも必要なこと。

 日頃から身につけておくと、冷静に判断して自分で行動する時に役立つ。

 買物も散歩も一人ででかける。一人の時間が大事だとコロナは教える。
「コロナてんでんこ」。私は今日も一人つぶやいている。

週刊朝日  2020年5月8-15日号

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下重暁子

下重暁子

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

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