「やっといろんなことから解き放たれた」と笑う“伝説のミューズ”、小林麻美さん。いきいきと今を生き、「これから」を語る、ミューズの今を撮り下ろした。
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カメラの前で、くるくるとポーズを変えながら、楽しくてたまらないという表情で可憐に舞う。1980年代のミューズが、極秘出産と結婚を同時に発表し、芸能界を突如引退して29年。その姿は、ブランクを全く感じさせないものだった。
「ひたすら普通の主婦という毎日。息子が就職するまでは、脇目もふらず“お母さん”をやってました」
小林麻美は、この29年をこう振り返る。両親が共働きで、学校から帰ると「おかえり」と言って迎えてくれる母親に強く憧れた子ども時代。その思いから、表舞台への未練は一切なく、“お母さん一筋”であることに迷いはなかった。
「子どもが成長していくのを見守れたことは、人生で一番幸せだった。何物にも代えがたい、かけがえのない時間でした」
子育てを終え、2016年にモデルとして復帰。評伝『小林麻美 第二幕』も3月、刊行した。同世代の女友達との旅や、15年習っているという日本画に向き合う時間も、今の楽しみの一つだ。
「みんな自分の時間が持てる年代だから、旅は毎年必ず行こうねって約束してる。そういうのが楽しい。今までは夫や子どもを考えて行動してたけど、ここから先は、自分のために楽しく生きようって」
“第二幕”は、始まったばかりだ。(本誌・松岡かすみ)
※週刊朝日 2020年4月24日号