賃貸物件を借り手が好きなように改修できる「DIY」(Do It Yourself)物件がじわりと増えている。オーナー側は、そのままでは借り手がつかない古い物件に改修費をかけずに済み、借り手側は、かなりお得な家賃で借りられる。国も空き家対策の一環として活用したい考えだ。
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中央大、帝京大、拓殖大、多摩美術大などがある東京西部の八王子市。人口は約56万人で、学生が10万人近く暮らしている。
1980年代までは、周辺自治体を含め、多くの大学が都心からキャンパスを移したが、最近は逆に都心回帰で学生数も減少傾向にあり、2012~16年で1万人程度も減った。
JR八王子駅からバスで20~30分あたりの地域では、以前建てられた学生向けのアパートなどの空室が増えているという。
当然、築数十年の物件になると畳の和室があるなど内装も古く、最近の若者らは使いにくい。
そんな中、自分で自由に改装ができ、家賃が相場より安い「DIY型賃貸借物件」(DIY物件)を仲介する不動産業者が増えてきている。オーナー側も、古い物件に多額の費用をかけてリニューアルするより、安い家賃でも空き部屋が埋まるほうがメリットがあるようだ。
八王子市の不動産会社「エスエストラスト」は、14年からDIY物件を扱い始めた。
当時、八王子駅から徒歩10分弱の築40年程度で、25部屋中8部屋が空いたままのマンションがあった。和室ありの2Kで、家賃は月5万5千円ほど。
オーナーが、リニューアルした場合にいくらかかるか見積もったところ、約1千万円。そのため空き部屋をそのままにしていたという。
エスエストラストが、「部屋を放っておくくらいなら、DIY型賃貸借で月2万円で貸してみませんか」と提案してみると、これにオーナーが応じてくれたという。
空いた8部屋のうち、1部屋をエスエストラストがモデルルームにし、デザイナーの協力で改装、残る7部屋はオーナーが借り手にDIY物件としてそれぞれ貸し出した。マンションは「DIYができる」と口コミで情報が広まり、一時は空き部屋待ちの人気物件になったこともある。