DIY物件では、借り手が退去時に原状回復義務を負うかどうかがポイントとなる。エスエストラストが扱う事例は、その義務がないケース。一方、その義務を残したまま、貸し手と借り手が相談し、どこまで修繕改修を認めるか契約書を交わすことも少なくない。国のガイドラインはそうした場合の手引書となる。

 千葉県松戸市の「omusubi不動産」は、DIY物件を多く取り扱う。賃貸借の管理物件200戸ぐらいのうち、9割程度がDIYが可能という。担当者によると、対象物件は昭和30~40年代の古い建物が多く、間取りも和室2部屋など昔ながらのつくりになっている。

「借り手は床や壁、天井、間取りを変更するほか、水回りを手づくりで変えた方もいます。オーナーには、借り手がDIYにすることを紹介しながら提案し、原則として改装希望の届け出が出たら承認していただきたい、とお願いしています」

 omusubi不動産では、物件をクリエーターやアーティスト系の人に紹介することが多い。古くなっていた物件が改装されて最終的に返却されるため、オーナーにとって家賃を安くしてもメリットがある。家賃は相場の7割程度の水準が多いという。

 同じ市内で不動産業を営む「まちづクリエイティブ」は、11年からDIY物件を扱っている。同社がオーナーと賃貸借契約した物件を、利用者に転貸借する方式で、オーナーには家賃を保証する。最初の物件は400坪ぐらいの土地に五つの建物があり、築100年ぐらいだった。寺井元一代表はこう話す。

「原状回復義務はほとんどの場合ありますが、われわれが原状回復すればいいという考え方でした。実際にはDIYで物件の家賃が上昇しています。利用者には改築届を出してもらい、屋根や外壁、躯体(くたい)の変更は不可としています。築50~60年ぐらいが多く、新しいもので築40年ぐらい。壁や天井を取り壊す人が多く、つくり直したり、床を張り替えたりする人もいます。そのまま広々使う人もいます」

 まちづクリエイティブは松戸駅から徒歩圏のエリアで、まちづくりの発想で取り組んでいる。

 古い建物をリフォームしながら住み続けることは欧州などで当たり前のことになっている。一方、壊しては建て直すのが当然の最近の日本で、DIY賃貸が根付けば古い建物が見直され、空き家対策の一助にもなるだろう。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2020年3月27日号