三田:はい。それは私の大きな反省点であり、大きな後悔であり、失敗です。

佐藤:失敗とはいえないでしょう。だってそのときは三田さんは女優さんをやるのが“必然”だったんだから。いまお話しになっていることは、結果論ですよ。

三田:そうですよね。でも私の存在は、彼の更生の邪魔にもなっていたと思うんです。何度も立ち直ろうとして頑張っていたんですけれど、やはり三田佳子の息子ということでメディアに追いかけられて……。たまたま息抜きに漫画を読んでいれば、「だらけてヨダレたらして漫画本読んでるこのバカが!」と見知らぬ人に罵倒されたりなんてこともあったようです。そして残念なことに失敗を繰り返してしまった。

佐藤:うーん……辛いねえ。

三田:本当に……。赦されないことをしたのだから当然とはいえ、その都度、大事件として日本中で取り上げられてしまう。本人は一市民として、そこから立ち直ろうと何度も頑張っているんですけど……難しいですね。この20年、母親として責任を持って、なんとかしてやりたいと思ってきました。ずっと自分を責めもしました。でもいま、私の意識の中では、昨年「卒母(そつはは)」をしたんです。

佐藤:卒母って、どういうことですか?

三田:私も女性誌の企画で声をかけていただいたのですが、もう子どもにことあるごとに「こうするのよ」「ああするのよ」と教えていく“子どものおかあさん”として接するのではなく、一対一の関係になって接するということです。

佐藤:うーん、よくわからない。母を卒業する? そんなことできないでしょう。もう少し説明してください。

三田:そうですね。自分の中に子育ての後悔があったから、子どもから離れてはいけない、そんなふうに思い込んでいたんです。でももう息子も40歳です。親と子の間できちんと距離を置くべきところは置かなくては。そう意識したら自然に、気持ちが断ち切れたんですね。「卒母」という言葉は目からうろこでした。この言葉を受け入れることによって、私も一歩前進できたように思います。

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