(10)感染者を強制入院させられる「指定感染症」に問題はないのか?


 新型コロナは感染症法に基づく「指定感染症」になる。入院の勧告や就業制限、治療が公費で負担される対象の人は発症している人に限られていた。しかし、政府は2月13日、政令を改正してせきや発熱などの症状の出ていない感染者も法のもとによる入院勧告などの対象に加えた。

 川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦医師が疑問を呈する。

「感染の有無だけで強制入院させると、結局、重い患者を診るべき専門病院に軽症の人が来ることになり、ベッドが無症状者や軽症者で満床になる可能性がある。軽症の人を軽んじるわけではないが、重症者に必要な治療に手が回らなくなる恐れがあります」

 感染者に入院勧告する権限は、都道府県知事にある。森澤氏がこう提言する。

「感染者全員が一律入院できるほど、日本の指定医療機関に余裕はない。知事が地域で十分に議論して、無症状の人を対象外にするなどの対策があってもいい」

(11)感染者の14日間の隔離は妥当なのか?
 いったん感染が確認されると事実上、2週間も隔離することにも疑問の声が上がる。

「現実的に、いまの日本で2週間も仕事を休める人がどれだけいるでしょうか。症状は風邪やインフルエンザと同じですから、感染が疑われても申告しない人が出ます。せきが少し出るなど軽症の人が満員電車に乗って、ウイルスをまき散らすことになります。解熱しても2日間休むなどインフルエンザ対策と一緒にしたほうが国民の理解が得られやすく、流行は抑制されるはずです」(上氏)

(12)SNS上にフェイクニュースが流れている

 岩田氏が怒る。

「まったく不必要な騒ぎはSNS上にデタラメな情報があふれていることです。デマが多く、中国の陰謀だとか、生物兵器だとかいった情報が出ています。特定の国や民族に対するバッシングはまったくナンセンスで、社会倫理にも反します」

 デマを拡散する人たちの心理について、武庫川女子大学文学部心理・社会福祉学科の竹中一平講師は、「悪意をもって、誤情報を拡散する人は少数。真偽が明確ではないからこそ、『もしかしたら正しいかも……』という意識で、その情報を流している」と分析する。

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