次に、個別の大学の志願状況をみていこう。まずは、東大、京大、旧帝大などの難関国立大から。志願者数は、ほとんどの大学で減少していた。

受験生は来年への不安感が募り、難関大を敬遠して弱気含みの出願になったと思われます」(石原さん)

 東北大は経済、教育、農など5学部で志願者を10%以上減らした。同大はAO入試の募集人員を全体の3割にすることを目標にしており、2020年度は全体の募集人員の25%を占める。多様な入試方式に積極的に取り組んだ結果、人気が高まり模試のボーダーラインも上がったことから、センター試験で苦戦した受験生が競争を回避したものとみられる。

 例外は北海道大学。難関国立大で唯一、志願者数を伸ばした。これは、最後のセンター試験で苦戦した受験生が、比較的難易度の低い北大に出願しているという流れもあるとみられる。

 安全志向以外の要因が大きそうなのは、一橋大。一橋大は、石原さんによると二つの理由がありそうだ。

「一つは、『文理融合』が歓迎される昨今、単科大として敬遠されたことが考えられます。もう一つは、今年からの授業料の値上げです」

 一橋大は、今年4月以降入学の学部生と、来年4月以降入学の大学院生(経営管理研究科)の年間授業料について、現行の53万5800円から2割増の64万2960円に引き上げると発表している。国際競争力を引き上げるための教員の増員や語学教育の拡充にあてるとしているが、年間10万円の増額は、家計への負担が重すぎたのだろう。

「理系であれば、大学院卒業までの6年間の学費や教員1人あたりの学生の人数など、私大に勝る国立大の強みがいくつかあります。しかし文系となると、首都圏は魅力的な私大も多く、授業料を除くと勝負しにくいといえるでしょう」(石原さん)

 対して、公立大の志願状況は今年は中期の出願が前年並み。受験機会の確保とみられる。

「公立諏訪東京理科大のように3教科で受けられる大学もあります。日程と科目数によっては出願しやすい大学もあるのは公立の特徴です」(岩瀬さん)

「最近私大から公立化した大学にも人気が集まっていますね。地元の国立大志望の受験生が、安全志向から入りやすい地元公立大に集まり、倍率が高くなります」(石原さん)

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