■セ・利用より一般に勝算あり

 私大センター利用入試の動向からも受験生の安全志向が見てとれた。30校のうち、前年比が100%を超えたのは9校だけ。全体的に減少が目立った。私大受験者は今年はセンター利用入試を避ける傾向があったとみるのは、大学通信の安田賢治常務だ。

「上位校だと合格最低点が8割と言われるのがセンター利用です。ハイレベルな戦いになるので、一般入試のほうが勝算があると判断した受験生が多かったと思われます」

 安全志向で、早稲田、東京理科大、MARCH(明治大青山学院大立教大、中央大、法政大)も軒並み2割前後の志願者減。近年人気が高まっている東洋大は3割減だった。

 注目すべきは千葉工業大で、前年比115.4%と増加率も全体1位だった。昨年の同じ志願者ランキングでも120%超え、一昨年は約110%と志願者数を伸ばし続けてきた。

「東京理科大や芝浦工業大が減っています。本来ここに出願する層の安全志向で、千葉工業大に出願したのではないでしょうか」(安田さん)

 さらに、14年に打ち上げられ、昨年、2度の小惑星着陸や世界で初めて小惑星でのクレーター作りに成功した「はやぶさ2」が、人気を後押ししたようだ。入試広報部長の日下部聡さんは次のように話す。

「2019年はメディア露出が多かったのです。ほとんどの観測機器などをうちが開発した小惑星探査機『はやぶさ2』をニュース番組や新聞で取り上げてもらいました。地方の受験生の出願が伸びているので、それで知名度が上がったのではと見ています」

 前年比106.7%の東京都市大は入試方式が志願者増につながった。「前期5教科基準点型」のセンター利用は、17ある学科ごとにあらかじめ合格基準点が明示され、センター得点がその基準点を上回れば即合格となる。基準点を用いない3教科型の出願が前年を下回ったのに対し、この基準点型は約30%増えた。

「国公立大の併願が多いのでターゲット層に合っており、受験生に安心感を持ってもらえる入試方式と考えています」(入試センター課長の小澤亮賀さん)

 ほかにも、18年に情報理工学部を開設した京都産業大、21年4月にみなとみらいキャンパスを開設する神奈川大などは、人気を集める結果となった。

「改革に動いているところはやっぱり増えています」(安田さん)

 安全志向が色濃く出た国公立大とセンター利用。センター試験の結果が芳しくなくとも、気持ちを切り替えて一戦必勝で臨んでほしい。(本誌・緒方麦)

週刊朝日  2020年2月21日号