第三者委が注目したのは出願書類である「志願票・調査書」の採点結果。入試要項では具体的な配点は示されていないが、これが入試結果を大きく左右していたのだ。

 もちろん、元入試委員長らは、受験生の部活動の状況などに応じて志願票・調査書を個別に採点しており、差別的取り扱いはなかったと主張していた。

 だが、第三者委の報告書で、次のように女性や浪人生への差別があったことがはっきりした。

「調査対象年度における一般入学試験において、元入試委員長ら4名による、性別・現浪区分という属性を理由とする一律の差別的取り扱いが行われていたと認定した」

 第三者委がパソコンなどを調べたところ、第2次試験科目の点数や、年齢、現役・浪人の区分があるエクセルファイル(表計算ソフトのファイル)が発見された。作成経緯は、元入試委員長らから聞き取り調査したが、よく分からなかったという。公にしにくい、「秘密ファイル」だったようだ。

 この内容を分析すると、志願票・調査書の採点結果が、「性別や現役・浪人の区分に応じて機械的に割り振られている傾向が顕著に認められた」という。

 15年度の入試では、志願票・調査書(配点80点)について、男女でほぼ18点の差がつけられていた。つまり女性は18点分の“ハンデ”をつけられていたことになる。現役男性の点数が最も高く、浪人女性の点数が最も低くなるようになっていた。

 16年度では、配点80点について、男女でほぼ19点の差がつけられていた。17年度では、配点が160点と全体における比重が高まり、男女の点数の差はほぼ60点に拡大。18年度では配点が180点になり、“ハンデ”はさらに広がって、ほぼ80点の差がつけられていた。

 第三者委は元入試委員長らは志願票・調査書の内容を個別には吟味せず、性別や現役・浪人の区分によって一律的に点数調整したものだと結論づけた。

 実際に、パソコンを調べて見つかった16年2月作成のエクセルファイルでは、「男性調整点」との項目があり、「19.0」と記載されていた。「現浪区分」の項目もあり、現役生らに加算されていたことが疑われる点数と一致した。

 また、入試管理システムには、「ピンポイント」と呼ばれる機能があったという。特定の受験番号に、根拠がわかりにくい「調整点」を加算できるもので、入試の公平・公正性を疑わせるものだ。

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模擬採点があぶり出した不正