これらの証拠があるのに、元入試委員長らは差別的な取り扱いを否定し続けている。

 第三者委は採点に疑問がある志願票・調査書を抽出。性別や生年月日、現役・浪人の区分などを黒塗りにしたうえで、元入試委員長らに「模擬採点」するように求めた。公正な調査をするため、事前には知らせず、聴取の場で初めて採点することを要請した。

 その結果、一部を除いて、実際の2次試験成績一覧表の点数と大きく異なるものとなった。実際には点数が低かった女性・多浪生の志願票・調査書の方が、高く評価される傾向があったという。

 本当に個別に吟味したのなら、同じ人が採点している以上、実際の点数と大きく異なることは考えにくい。元入試委員長らは、異なった理由を合理的に説明できなかったという。記載内容は評価せず、性別や現役・浪人の区分だけで機械的に点数をつける、不正な採点が行われていたことを裏付けるものだ。

 元入試委員長が、多浪生の差別的取り扱いを認識しているようなメールもみつかった。15年度の入試の合否判定会議後に送信したメールで、次のような記述があったという。

「現浪7という区分であったことを差し引いても合格圏内であったが、面接と適性検査が理由で不合格とされた」(現浪区分7は短大卒・大学中退・大学在学を示す)

 元入試委員長は、「一般論を踏まえての言い回しであったかと思う」と主張したが、第三者委は差別的取り扱いの認識が記述に表れたものであると強く疑われるという。

 第三者委は、元入試委員長らが不合理な供述や弁解をしていることからも、差別的取り扱いはあったと判断。報告書で次のように批判している。

「公正な入学試験の実施に努めるべき責を負う入試委員長、副委員長が性別・現浪区分という属性を理由とする一律の差別的取り扱いを行っていたという事実は、厳しい非難に値するものであり、その責任は極めて重い」

「性別や現浪区分に応じた機械的な加点の度合いが年々増加されていることからすれば、公正かつ適正な方法で入学試験を行わなければならないという規範意識は年々希薄化していったものとさえいえる」

 8人でつくる入試委員会は入学試験要項に記載されていない配点がなされていたことは知っていたのに、相互チェック機能が働かなかった。理事長や学長、学部長らも、適正な役割が果たせておらず、監督責任は免れないとされた。

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根深い「男性医師偏重の意識」