人口減で檀家(だんか)が減り墓じまいもあって運営に行き詰まる──。そんな状況が広がっているのだ。『寺院消滅』(日経BP)の著者で、ジャーナリストで僧侶でもある鵜飼秀徳さんは、「いつの時代でも社会に受け入れられる寺しか残らない」と言い切る。

「寺の数が減るのは、少子高齢化や人口流出だけが理由ではありません。複合的な要因が組み合わさっているのです。地縁や血縁が薄れ、寺や地元への帰属意識は弱くなった。死生観も変わり、必ずしも先祖代々の墓に入らなくてもよいと感じる人が増えています。葬式や墓も、簡素なもので済ます考え方が広がりつつある。寺がなくなるのは、一言で言えば、その地域や社会に必要とされていないからではないでしょうか」

 鵜飼さんがこうした厳しい指摘をするのは、なんとかして寺を残したいという思いがあるからだ。

 社会に必要とされる寺は残る。死を迎える人や親族、知人らが寄り添う場になり、地域の人たちにとっては憩いの場にもなり得る。鵜飼さんは役割を見直し、民間企業と寺をつなぐ活動も始めている。

「自助努力には限界があり、行政も頼りになりません。寺に人とお金を呼び込むには、企業と協力するしかないのです」

 宗教学者の島田さんも、なくなると地域にとって困る存在だという。

「当たり前のことですが、寺はお金を稼ぐことを目的とした組織ではありません。本来は低収入でもやっていけるはずなのです。檀家や地域の人たちの心のよりどころとなる存在であり続ければ、その地域や集落がなくなるぎりぎりまで残ると思います」

 これからお寺が減っていくことは避けられそうにない。いったん消えたものを復活させるのは、困難だと専門家は口をそろえる。私たちにできることはなにか。下にお寺とのつきあい方をまとめた。

【お寺とのつきあい方】※専門家への取材をもとに編集部作成
●住職らとのコミュニケーションを大切に。お墓参りのときにあいさつしておけば、家庭の事情も伝えられるし、お寺の状況もわかる。お墓を守ってくれていることに感謝の気持ちも伝えよう。

次のページ