秋田市が整備した合葬墓。墓じまいをして合葬墓に移すケースもある (c)朝日新聞社
秋田市が整備した合葬墓。墓じまいをして合葬墓に移すケースもある (c)朝日新聞社
お寺とのつきあい方 (週刊朝日2019年12月27日号より)
お寺とのつきあい方 (週刊朝日2019年12月27日号より)

 先祖代々のお墓を守ってくれているお寺。都会に暮らしていても死んだら実家の菩提寺のお墓に入ろうという人も多い。だが、地方を中心に過疎化で信徒が減り、収入が500万円以下の「低収入寺院」も多く、苦境に立っている。約20年後の2040年には、全国に約7万7千ある寺院の3分の1が消失するかもしれないのだ。魂のよりどころともいえるお寺が街から消える日。私たちはどうすればいいのか。

【まとめ】私たちにできるお寺とのつきあい方

 お寺を巡る状況が厳しくなっている背景には、墓じまいもある。都会で暮らす人たちが実家の墓を閉じて、管理しやすいところに移す動きが増えているのだ。厚生労働省によると、墓を移す「改葬」は17年度は10万件を超えており、ここ10年近くで4割増加した。

 宗教学者で『葬式格差』(幻冬舎新書)などの著書がある島田裕巳さんはこう解説する。

「土葬が多かった戦前までは、集落や個人が墓地を管理するのが一般的でした。必ずしも寺に墓地があるわけではありませんでした。戦後の都市化に伴い火葬が広がっていく過程で、境内に墓地を設けるようになり、寺の経済基盤として位置づけられるようになったのです。その結果、今になって墓じまいが増えたことで、地方の寺を中心に経営が苦しくなっているのです」

 管理する人がいなくなったり、墓じまいで役目を終えたりした墓石などを有償で引き取っている広島県福山市の不動院。「安置所」には数万を超える墓石や仏像が並ぶ。解散した寺院からまとめて墓石を引き取るケースもあるという。

 秋田県が18年に県内の寺院を対象にしたアンケートでは、ここ5年間で管理している墓地が減っていると答えた割合が3割に上った。ほかへ転出した墓の数は計386基に上り、その6割近くが首都圏だったという。

 経営状況に関する質問には、半数近くが運営に不安があると答えた。「近い将来、廃寺も視野に入れている」「将来的には寺院は半減する」といった意見もあったという。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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