424病院の内訳は、公立が257、公的が167。今回分析対象となった全ての公立・公的病院の3割、民間を含むすべての病院の約5%に相当する。公立・公的病院の3割が消えるかもしれないというのは、ただ事ではない。

 自治体側の反発もあり、厚労省は「議論を促すために公表したもので、必ずしも統廃合を求めるものではない」と火消しに躍起だ。だが、この分析結果をもとに、20年9月までに、統廃合や病床削減などの再編策をとりまとめるよう都道府県に求める方針だ。

■国がアメとムチ 再編に追い込む

 リストでは病床の「稼働率」も公表しており、経営状況もわかる。統廃合の議論が必要と名指しされた病院にとっては、患者や職員に不安が広がり、圧力を感じる。一方で、厚労省は病院が再編を受け入れれば、「地域医療介護総合確保基金」などから資金を手厚く配ることも検討している。「アメとムチ」で病院側を追い込むようなものだ。

 国がある程度の反発を承知の上で追い込もうとしている背景には、医療費を減らす狙いがある。公立病院は全体の約6割が赤字で、年間約8千億円もの公金が投入されている。膨らむ医療費を削減し、医師や看護師を効率的に配置するには、統廃合は避けられないというのだ。

 こうした説明には一定の合理性はあるが、それならほかにもやるべきことがたくさんある。民間病院も含めた統廃合や医師の報酬削減などだが、こちらは日本医師会などにも配慮しているため進めにくい。

 今回のリストで名指しされた病院には、過疎地にあり経営状況が厳しいところが目立つ。国から追い込まれると、統廃合を受け入れざるを得ない。弱い立場の病院が狙い撃ちにされた格好だ。

 再編統合の検討を求められた病院の割合は、人口が多い都市部では低い。北海道や東北、北陸や中国など地方では高くなっている。国の思惑どおり統廃合が進めば、地域の病院が半減するところも出てきかねないのだ。(本誌・池田正史、多田敏男)

週刊朝日  2019年12月13日号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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