大手行や地方銀行など118行が加盟する全国銀行協会によると、18年度の全国銀行の決算(単体ベース)は、純利益が前年度に比べ27.1%減の2兆2131億円だった。

 銀行の稼ぐ力を示す「総資金利ざや」は年々低下している。融資や資金運用の利回りから、預金など資金調達にかかる金利などを差し引いたものだ。貸出金利が下がったことに加え、国債の金利も下がっており、総資金利ざやは減少傾向だ。

 経営環境は地方を中心にますます厳しくなる。東京商工リサーチ情報本部の原田三寛・情報部長はこう話す。

「貸し倒れのコストが上昇しています。地方の金融機関は競争が激しく、集まりすぎた預金を地域を超えて『越境融資』しているところもあります。越境した地域については企業に関する情報が乏しいので、審査が不十分になりがちです」

 地方経済は疲弊(ひへい)しており、経営に行き詰まる中小企業が目立つ。

「以前は借金を返済してから休廃業していました。最近は借金を返さないまま、休廃業するところも多い。休廃業の件数は18年に過去最高となり、これからも増えるでしょう。地方の金融機関にとって、経営環境は一段と厳しくなりそうです」(原田さん)

 地方の金融機関の競争が激しいのは、地方経済が縮小しているのに銀行が過剰な、「オーバーバンキング」が続いていることもある。

 地銀は銀行同士だけでなく、信用金庫や信用組合などとも貸し出し競争をしている。(本誌・浅井秀樹、池田正史、多田敏男)

週刊朝日  2019年12月6日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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