口座維持手数料を明示しているところはまだ少ないが、一部の銀行では始まっている。

 三井住友銀行の子会社のSMBC信託銀行は、旧シティバンク銀行の個人顧客向け事業を買収。SMBC信託銀行プレスティアのブランドで富裕層向けサービスを展開し、口座維持手数料として月額2千円(税別)を設定している。月間平均総取引残高が50万円相当額以上などの条件を満たせば、手数料はかからない。

 実質的に同じようなことをしているところもある。

 りそなホールディングス傘下のりそな銀行と埼玉りそな銀行は、預金残高が1万円未満で出し入れが2年以上ないと、「未利用口座」と認定。管理手数料として1200円(税別)を年1回引き落とす。残高が手数料に足りなくなると自動的に口座を解約する。残高が5千円の口座では、計算上4年目で足りなくなる。

 事前に顧客の住所に文書を送り注意を促すというが、引っ越しなどで届かなかったとしても、「通常到達すべき時に到達したものとみなす」。手数料の返却や解約した口座の再利用には応じない。

 顧客が住所変更をしないまま残高が1万円未満の口座を放っておくと、知らないうちに全て手数料としてとられてしまう。

 りそな側は、「休眠口座にならないよう顧客に利用再開を促すためのものだ」としている。

 コンビニエンスストアのローソンが子会社を通じて運営するローソン銀行も、「未使用口座管理手数料」として、りそなと同じような仕組みがある。

 こうした仕組みは顧客からすれば納得しにくいが、銀行側にも言い分はある。

 どこでも、紙の通帳1冊につき毎年200円の印紙税を銀行側が負担している。口座管理のシステムや人件費もかさむ。残高にかかわらず、一つの口座あたり年間数千円の維持費がかかるとされる。残高が少なく取引もない口座は、銀行側にとってはコストだけかかる“お荷物”なのだ。

 10年以上出し入れがない口座の預金は「休眠預金」として、公益活動の資金にまわす国の制度も始まっている。銀行側が独自に未使用口座管理手数料などを設定すれば、年間数百億円生まれるとされる休眠預金が減り、結果的に公益活動に資金がまわらなくなる可能性もある。

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