




世界的に影響力を持つローマ・カトリック教会のトップが、38年ぶりに日本を訪れた。フランシスコ教皇は11月23日に来日し、被爆地の長崎市や広島市で核兵器廃絶を訴えた。東京では25日午前に東日本大震災の被災者らと面会、原発の将来的な廃止に言及した。
集会では被災者らが復興に向け助け合っていることをたたえつつ、将来のエネルギー源の見直しを訴えた。
「私たちはこの地球の一部であり、環境の一部です。全てが互いに関与しています。まずは天然資源の使用について、そして将来のエネルギー源について、勇気ある重大な決断をすることです」
こう訴えた上で、原発事故では科学的、医学的な懸念に加え、社会構造を回復するという途方もない作業が必要になると指摘。
「地域のつながりが再び築かれ、安全で安心した生活ができるようにならなければ、福島の事故は完全には解決されません。これが意味するのは、私の“兄弟”である日本の司教たちがいみじくも指摘した、原子力の継続的な使用に対する懸念です。司教たちは原発の廃止を求めました。いまの時代には、技術的な進歩を人間の進歩として受け止める『技術主義』がはびこっています。このようなときには立ち止まり、振り返ってみることが大切です。私たちは何者なのか、どのような者になりたいのか、自戒することが大事です。後世にどのような世界を残したいのか。利己的な決断はせずに、私たちは未来の世代に大きな責任があることに気づかなければなりません。控えめでつつましい生き方をすることが求められます」
このように述べ、原発廃止に理解を示した。フランシスコ教皇はこれまでも原発について、「バベルの塔」になぞらえるなど警鐘を鳴らしてきた。バベルの塔とは、天に達するような高い塔を作ろうとした人間の思い上がりを戒める物語だ。
原発廃止について婉曲(えんきょく)的な表現になったのは、日本を含め廃止に反対する各国政府に配慮したためとみられる。世界にはフランスなど原発に依存するカトリック信者が多い国もある。中国やインドなど原発建設を急ぐ国もあり、廃止は非現実的だという見方も強い。
一方で、原発事故を起こした日本において、教皇が将来的な廃止に言及したことの意味は大きい。スピーチはネットを通じて世界中に配信されており、原発廃止の流れを後押ししそうだ。
教皇は核兵器の廃絶については、はっきりと訴えた。