よめはんと二人でアウトレットに行くと… ギャンブル好きの直木賞作家・黒川博行の日常 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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よめはんと二人でアウトレットに行くと… ギャンブル好きの直木賞作家・黒川博行の日常

連載「出たとこ勝負」

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黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)

※写真はイメージです (Getty Images)

※写真はイメージです (Getty Images)

 隙を見せてはいけない。買え、というようなニュアンスの言葉を発したら最後、伝票はわたしに来る。

 腹が痛い、トイレに行く、一時間後にインフォメーション前に集合、といってわたしは店を出た。フードコートで、たこ焼きを食う。

 思えば物欲がなくなった。よめはんと学生結婚して就職し、茨木の借家に住んで車が欲しくなり、父親に金を借りて買ったのがホンダのシビックだった。車が来ると自前の家が欲しくなり、十万円の貯金もないのに、また父親に頭金を借りてローンを組み、箕面に家を建てた。敷地二十五坪、建延二十三坪の小さな家は子供が生まれて手狭になり、大阪府の住宅供給公社に申し込んだら羽曳野の分譲住宅が補欠で当たった。

 車は茨木のころのシビック、箕面のころのスプリンターとスカイライン、羽曳野に来てパルサー、パジェロ、MR2、オペル……と替わり、子供は成人して出ていった。そう、いまわたしが欲しいのは車と麻雀のツキだけかもしれない。

 よめはんと合流した。両手に大きな紙バッグを提げている。「ピヨコちゃん、去年のお誕生日プレゼント、もらってなかったよね」「そうやったかな」「ありがとう。〇〇円、ちょうだい」「そんな金、持ってへん」「振り込みでいいから」「夫婦で銀行振り込みはないやろ」「はい、これ」

 抗弁むなしく領収書をもらい、なぜかしらん、紙バッグを持たされた。

週刊朝日  2019年11月15日号


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黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する

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