安全優先のため、危険な現場には公務員や報道関係者もできるだけ近づかないようになっている。危険な状況を把握し報道するまで、時間がかかることも考えられる。テレビやラジオの情報だけで安心せず、迷ったら避難するようにしたい。

 早めの避難が大切だが、すでに浸水している場合は、避難所まで行くほうが危険なケースもある。近くの頑丈な建物に移るか、自宅に残るとしても2階など少しでも高い場所にいるべきだ。こうした水害への対処法が徹底されていれば、被害は少なくなった可能性がある。

 一方で今回の水害では、堤防が決壊し一気に浸水するなど、個人ではどうしようもない状況もあった。安倍晋三首相が「国民の生命と財産を守る」とよく言うように、災害対策は政府の最重要課題だ。ところが、財政の悪化などを口実に、対策は先送りされがちだ。防災コンサルタントで1級建築士の三舩康道さんは政府の責任は重いという。

「早めに避難を呼びかけても堤防が決壊すれば、周辺の住民は大きな被害を受けてしまう。記録的な水害が度々起きているので、堤防の改修などが必要になります。政府はこれまで公共工事を抑制してきましたが、人命を守るために思い切って予算をまわしていくべきです」

 被災地では、今なお避難生活を強いられている人がたくさんいる。支援態勢や今後の治水対策は十分なのか。今回の被害を教訓に、政府の対応もチェックしていかなければならない。
(本誌・秦正理、浅井秀樹、多田敏男)
※週刊朝日オンライン限定記事

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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