決壊した千曲川の堤防=10月13日、長野市 (c)朝日新聞社
決壊した千曲川の堤防=10月13日、長野市 (c)朝日新聞社
ヘリで救助される人=10月13日、宮城県大崎市 (c)朝日新聞社
ヘリで救助される人=10月13日、宮城県大崎市 (c)朝日新聞社
増水し川沿いの歩道が浸水した隅田川=10月12日、東京都墨田区(撮影・多田敏男)
増水し川沿いの歩道が浸水した隅田川=10月12日、東京都墨田区(撮影・多田敏男)

 全国に大きな被害をもたらした台風19号が上陸してから1週間たった。死者・行方不明は10月19日時点で90人を超えている。河川の堤防決壊は100カ所超に上る。今も避難している人は多く、復旧にはかなりの時間がかかる。

【写真】増水し川沿いの歩道が浸水した隅田川

 ここまで被害が深刻になったのは、「スーパー台風」の猛威と避難の遅れなど、複数の要因が重なったためだ。巨大台風はこれからも日本を襲う。政府は水害対策の強化を求められる。

 台風19号は各地で記録的な大雨をもたらし、水害による被害が相次いだ。朝日新聞の集計によると、福島県や宮城県などで死者は計80人に上るという。捜索活動は続いており、亡くなった方はさらに増えそうだ。

 国土交通省によると、19日までに100カ所超で堤防の決壊が確認された。決壊による急激な浸水が各地で発生し、人的被害が増えたとみられる。

 総務省消防庁の19日午後12時45分時点の集計では、全壊・半壊・一部損壊した住宅は2500棟超、床上浸水は2万4千棟超となっている。

 断水や停電なども相次いだ。厚生労働省によると、水道管の破損や浄水場の冠水などで最大15万戸超で断水した。

 衝撃的だったのは水没した北陸新幹線の映像だ。長野市を流れる千曲川の氾濫で、10編成(1編成12両)の計120両が浸水した。北陸新幹線全体の車両の3分の1に上る。電子機器などが水につかれば交換する必要があり、「廃車」になる可能性もある。10編成がすべて廃車になれば、損害額は300億円を超えそうだ。

 新幹線は19日時点で、東京−長野間と金沢−上越妙高間で折り返し運転している。全線復旧は10月25日までかかるという。復旧しても水没した車両の代わりはすぐに用意できないため、運行本数は約8割まで減りそうだ。

 各地に大きな爪痕を残した台風19号について、横浜国立大学の筆保弘徳准教授(気象学)は、まさに「スーパー台風」だったという。

「通常の台風はいったん気圧が下がってもだんだんと勢いが弱まるが、今回はなかなか弱まらなかった。原因の一つは日本近海の海面水温が高かったこと。台風のサイズも非常に大きく、広い範囲で大量の雨が降った。河川が雨量をまかないきれず決壊したのです」

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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今後も日本を襲いそうなスーパー台風