こうしたスーパー台風への警戒は今後も必要だという。

「最近では台風の強さが高まる傾向があります。今回は9月の台風15号の被害を受けて警戒していましたが、水害を個人で防ぐことは難しかった。台風は地震などと違って対策をするリードタイムがあるので、準備できることはたくさんある。自分は大丈夫だと思わない防災意識が大事です」

 宮村忠・関東学院大学名誉教授(河川工学)は、一つの台風でこれだけ広範囲に被害が出ることはあまり例がないという。

「今回のような猛威が再び来ると思わなければいけません。個人や地域ごとに何ができるかを考えましょう。早めの避難はもちろんですが、必要なものを日頃から用意しておくなど、準備が大切です」

 今回の水害では、高齢者らが逃げ遅れ、自宅で被害に遭うケースが目立った。各自治体では早めに避難勧告を出すなど、浸水が激しくなる前の避難を呼びかけたという。だが、いつ、どこに避難すればいいのかわからないという人も多かった。ネットを利用しにくい高齢者らに、いかに正確な情報を早く伝えるかという課題が浮き彫りになった。

 防災都市計画研究所の吉川忠寛所長は、ハザードマップなどで自宅の危険性を把握し、避難場所や避難経路を確認しておくよう訴える。

「注意すべきは雨量や河川の水位、土砂崩れの警戒情報などです。スマホを持ってない人は家族に知らせてもらいます。近所や町内会で情報を共有し声掛けしてもらうと、早めの避難につながります」

 前出の筆保准教授は、警戒や避難の呼びかけに工夫が必要だという。

「数字で何ミリ降りますと言われても危険度が伝わりにくい。高齢者らネットを利用できない人には、周辺の人が援護するなど、目線を変えなければいけない。情報弱者をいち早く把握し助ける仕組みを地域ごとに設けるために、国はもっと援助すべきです」

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財政の悪化を口実に先送りされてきた災害対策