長塚圭史が描いた“東京版”「桜姫」 ラジオマン延江が心底うかれた理由 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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長塚圭史が描いた“東京版”「桜姫」 ラジオマン延江が心底うかれた理由

連載「RADIO PA PA」

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延江浩週刊朝日#延江浩
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞

右、中村まこと、手前、藤間爽子 (c)宮本雅通

右、中村まこと、手前、藤間爽子 (c)宮本雅通

 TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は舞台「桜姫~燃焦旋律隊殺於焼跡(もえてこがれてばんどごろし)」について。

【写真】舞台「桜姫~燃焦旋律隊殺於焼跡」のワンシーン

*  *  *
 長塚圭史が主宰する阿佐ヶ谷スパイダースの公演を吉祥寺シアターで観た。

「桜姫~燃焦旋律隊殺於焼跡」は、圭史が四代目鶴屋南北の原作を終戦後の東京版に書き下ろしたものだ。敗戦の混乱の中、聖人と尊敬された篤志家、清玄(中村まこと)と彼が支援した孤児院育ちの少女、吉田(藤間爽子)の物語。清玄には心中を図った過去があり、その際にひとりで死なせてしまった美少年がいたが、17歳の少女、吉田はその生まれ変わりである。

 吉田は戦争で心の荒廃した復員兵、権助(伊達暁)に犯されて子を産むが、それを清玄との子だと世に偽る。

 そんな清玄のもとには狐の仮面をつけた謎の男、七郎(富岡晃一郎)や野心家で邪悪な取り巻き連中が入れ替わり現れる。また、少女の吉田だけが見聞きできる音楽隊が、ピアニカや太鼓、ウクレレで哀しげなメロディを奏でたりと、破天荒ながら奥深いラビリンスの空間に誘(いざな)われた。

 道徳の退廃、利己主義の跋扈(ばっこ)、執拗なマスコミと扇動家、権力の横暴に彷徨(さまよ)う群衆……。舞台は戦後復興期の1948年の設定だが、今の社会のありようも予言しているように感じた。

 長塚圭史とは彼がロンドンに留学していた間を除いて、絶えずいろんなことを一緒にやってきた。ラジオドラマはもちろん、朗読しかり、朝の情報ワイドのパーソナリティをお願いしたり、取材チームを組んで瀬戸内・広島を旅したこともある。

 終演後、圭史から「芝居、楽しめた?」とラインが来た。

 楽しむもなにも。

 僕はこの芝居に心底浮かれてしまった。今回の舞台には人間の様々な業が立ち現れ、その一つ一つが僕の心に刻印された。そして、その業とともに僕も生きていくのだと思った。

 怨念の刃で、盛大に血を流す清玄がやっとのことで命を全うし、図らずも失敗した心中の呪縛から解き放たれる様は圧巻だ。


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