千曲川の堤防が決壊し、冠水した長野市内(C)朝日新聞社
千曲川の堤防が決壊し、冠水した長野市内(C)朝日新聞社

 東日本の各地で大きな爪痕を残した台風19号。長野県の千曲川では、堤防が決壊し、広い地域で浸水被害をもたらしている。東京都世田谷区を流れる多摩川でも氾濫し、多くの住宅が冠水した。岩手県宮古市など各地で土砂災害も出ている。

 台風、豪雨の被害額が過去10年で多かった東日本の自治体50

 内閣府の防災担当は「今回の被害の特徴は雨。風の強さよりも雨が多かったことで浸水被害や土砂崩れを各地に起こした」という。10日からの総雨量は、神奈川県箱根町で1000ミリ、関東甲信地方や静岡県の17地点で500ミリを超えた。1時間に20~30ミリの雨が降っただけで、小河川の氾濫やがけ崩れのリスクが出ると言われており、各地でリスクが高まった。

 今回の災害を見て、自分の住んでいる街は大丈夫かという意識も高まっている。そこで、本誌が独自集計した水害被害額が多い東西100の自治体を紹介したい。国土交通省が毎年公表している「水害統計調査」の過去10年分のデータを集計し、東日本、西日本の自治体ごとの被害額をまとめたものだ。
 今回被害が発生した自治体を見ると、以前から被害が出ている場所であることがわかる。

 例えば、千曲川が流れる上田市(長野県)は、この10年間に毎年のように水害が発生しており、被害額も47・7億円と大きい。100件の床下浸水の被害を出した越谷市(埼玉県)でも、これまで78・4億円の被害を出している。市の担当者によると、大雨により雨水が排水できないことで生じる「内水氾濫」がたびたび起きているという。

 国土交通省によると、21河川の24カ所で堤防が決壊したことがわかっている。堤防の決壊については、ダム優先の政策を進めてきた結果、河川の治水対策が遅れてきたことを指摘する声もある。特に地方においては予算が十分に確保できず、対策が進んでいないところが多いようだ。

 老人ホームなどの高齢者施設が被害を受けやすいという指摘もある。近年、川沿いなどの災害リスクの高い土地に立地する傾向があるためだ。

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら
次のページ
台風慣れしていない関東