AIメディカルサービスの多田智裕医師による内視鏡検査のイメージ=多田さん提供
AIメディカルサービスの多田智裕医師による内視鏡検査のイメージ=多田さん提供
AIを使った大腸がんの診断支援システムを開発した昭和大学の工藤進英特任教授=池田正史撮影
AIを使った大腸がんの診断支援システムを開発した昭和大学の工藤進英特任教授=池田正史撮影
AIの活用が期待される分野 (週刊朝日2019年10月11日号より)
AIの活用が期待される分野 (週刊朝日2019年10月11日号より)

 人工知能(AI)が医療分野に進出し始めている。内視鏡などの画像からがんを見分けられ、その精度はベテラン医師並みだという。だが、今後AIが医療現場に普及するに伴い、問題視されるのは責任の所在だ。AIの課題を現場の医師はどう見ているのか。

【図表】AIの活用が期待される分野は?

 AIで医療は大きく変わる。コンピューターが私たちの命を救ってくれる時代が来るのだ。

 もちろん課題もある。厚生労働省が昨年行った医療機関向けのアンケートでは、データや人材の不足を指摘する回答が多かった。

 最終的な責任を誰がとるかも大きなテーマだ。誤診があったときに、コンピューターのせいだけにはできない。

 厚労省は昨年12月、診断・治療の主体は医師で最終的な責任を負うとする通知を出した。AIはあくまでサポート役で、診断の最終的な責任を負うのは医師だと明確にした。

 AIの思考の過程は「ブラックボックス」と言われる。データのどんな点に注目し、どのような道筋で答えにたどりついたかを検証するのは難しい。がんの確率が高いと判断した画像をチェックしようとしても、人間の目では見分けることができないケースも想定される。がんを見極める能力は人間を上回りつつあるが、ブラックボックスに頼り切るわけにはいかない。

「AIの振る舞いは、ときに予測できないこともあります。実際の医療現場では、珍しい疾患を合併して発症しているケースもある。教科書に載っているような定型的な疾患ばかりではないのです。AIを完全に信用してしまうのは危険な場合もあります」(昭和大学特任教授の工藤進英医師)

 医療ベンチャー、AIメディカルサービス最高経営責任者(CEO)の多田智裕医師も、AIはあくまでツールだと言う。

「AIは病変の場所や疾患の確率を示すだけで、確定的な診断を下すのは人間の医師。スマホや車のナビゲーションシステムをイメージするとよいでしょう。過度に期待したり恐れたりする必要はありません」

 当面は、コンピューター任せの診断がなされることはない。ただ、技術の進歩は著しく、米国ではサポート役にとどまらないAIが登場している。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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